第46話 回復待ち
バッタをバッタバッタと倒して――などというオヤジギャグをいう年齢ではないが、かなりの量を捌いた。
そして現在のレベル。
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ロゼ=フジヅキ
存在レベル22(魔素*1908/2200)
生命*101/142 魔力*592/592
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ノアール=フジヅキ
存在レベル23(魔素*202/2300)
生命*805/805 魔力*3/8
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ノアールで、ロゼのときやらかした羞恥のもやもやを、バッタにぶつけてたらこうなった。単純に数をこなしたことと、ノアールで倒していた場所がロゼより深く、バッタの魔素が多かったのだろう。
俺の魔力は一体いつになったら2桁に上がるのか……。ロゼの生命が減っているのは、きつい運動をすると減るという相変わらずの体力の無さと、自然回復量の低さゆえだ。俺の魔力も回復しないがな!
辺境の村の村長の奥さんが生命50台だったし、ノアールと比べるとあれだが、ロゼの生命もだいぶ増えた。さすがゲームのキャラ。
「魔石が十一、この迷宮での成果としてはなかなかです」
ファレルが言う。
「滞在費くらいにはなるか?」
色々な物の値段や相場は勉強中だ。
「なります。ただ、ここで売るより、カバラで売った方が買取り価格は高くなります」
「ま、荷物にもならないしね」
ファレルと肩をすくめるミナ。
「今のところ金に困ってないしな。ではロゼにかわる」
ロゼで入ったのでロゼで出る。
この迷宮は中に生える若草を近隣の町や村で利用している。家畜の餌は毎日だし、五層くらいまでは草刈りしてる人が夜以外ずっといるんですよね。
あとタロイモ掘り。この町の主食らしいです。
草に混じってタロイモの大きめの葉をたくさん見ました。一応、『箱庭』に植えようかと思うんですが、『箱庭』にスカウトしたおじいちゃんをもう少し休ませてからにしましょう。具体的には最終日に芋掘りです。
タロイモにも草にも用がない冒険者にとって、魔物の素材も微妙すぎるこの迷宮はスルー対象です。他の冒険者がほぼ来ないので、目立ちまくってます。住人たちが作業をしている層では、視線が飛んでくること必至。
そういうわけで、人目についてもいいようにロゼになりましたよ? 抱っこして下さい。そのお胸にむぎゅっと遠慮なく。
「今日は頑張りました」
「うん。帰って夕飯にしよう」
ミナに片手抱きされて迷宮を出ます。階段を登らない幼女です。
町に戻っても外はまだ明るくって、夕食にはちょっと早い時間。でも町の広場には屋台が出てて、謎の肉の山。町は独り者も多いし、火を熾すのは面倒だし、外食するって人は多い。単純に薪代を考えると屋台で適当にすませる方が経済的なんですよね。
屋台だけ見ると薄茶色から茶色みたいなものばかりで、あんまり食欲をそそられないんだけど、食べてる人の顔を見ると美味しそうに見える不思議。
買い食いしたい気もするんですけど、幼女の胃は小さくてですね。
「あれを買うんで一口ください」
代わりに食べてください。
ミナの胸から、屋台の鉄板の端に積み上げられている肉を指す。鉄板は真ん中が火力が強くって、端の方は弱いのかな? じゅうじゅう肉を焼いてるのは真ん中です。
「ん。ちょうど小腹も空いたしな」
食べてくれるのはミナです。
ファレルは少食、あんまり胃が丈夫じゃないみたい? さすがにロゼよりは食べられるけどね! いっぱい食べられるの羨ましい幼女です。
ノアールで食べ歩きしたいけど、活動時間が町が寝静まったころが中心だったり、こんな風にロゼで出歩いてるもんだから、出歩きにくかったり。
その前に美味しそうなものが少ないんですけどね。ノアールで作った方が断然美味しいです。宿屋の髭面のむさいおっさんが作ってくれた料理の方がおいしいのもわかってるんです。
でもそれはそれ、これはこれです。
豚のどこかの部位を焼いたやつに、タロイモをつけてくれました。ここで食べて平な木皿は返す方式です。焼き串の屋台もあるけど、ここの屋台が一番人がいたんですよ。
「どうぞ」
ファレルがフォークを刺して渡してくれます。
鉄板の端に並んでる時は手のひら大の肉の塊だったけど、皿に盛ったところで屋台の人が食べやすい大きさに切ってくれるようです。だいぶ乱暴でぐちゃぐちゃになりましたけれど、食べやすくはなりました。
「ありがとう」
肉の断面がパサパサに見えます。
それなりに厚みがある肉なのになんでこんなに……って思ったけれど、鉄板の端で出番を待ってる間にぱさぱさしちゃったんですね?
そう思いながらお口に入れたら、見た目と違ってぱさぱさじゃありませんでした。あふれる肉汁! とはいきませんが、外側の脂が回って結構美味しいです。硬く縮んでしまってるんで、頑張って噛まなきゃいけませんけれども。
見た目里芋っぽいタロイモは、味も里芋に近かったです。味付けなしですが、肉の脂に塗れたお口にいい感じですよ。
豚や牛を手に入れて、『箱庭』で飼うつもりです。おじいちゃんに丸投げですけれどもね!
きっとこの町を出る頃には、おじいちゃんが鶏以外の世話ができる体力が戻ると信じて。レベル上げに勤しみます。
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