第43話 トローアの町
おじいちゃんからいくつか質問を受けた結果、俺にぼんやりした計画しかないことがすぐにばれた。一応、耕した畑の場所とか、キャベツ、お茶の木、コーヒーの木の植えてある場所を、ざっくりした図面を見せながら説明したんだけど。
とりあえず欲しいものと、欲しい風景を、次回までに考えてくるように言い渡された。
「ほかに働き手を連れてくる予定は?」
「今のところはない。ただ、この世をはかなんだ力仕事ができるようなヤツがいたら、拾ってくるかもしれない」
個人的には、かわいらしい少女とかが癒しなのだが、現実的に開拓には屈強な青年かオヤジが必要。癒しはその後だ。
「なんとも妙な物言いだが、そうだな、すでにある場所の手入れならともかく、畑を作るために木の根を起こし、大石をどける作業は、残念ながら儂では時間がかかって役に立てそうにない」
「早めにいい人材に会えるといいんだが。当面は、体調を戻しながらゆっくりで」
おじいちゃんがまだ本調子じゃないのでお暇する。
「ここにスープ壺置いておく。じゃあな」
暖炉にスープを温めるための壺を設置し、ロゼに姿を変える。
「あ、壺はちゃんと中身入りですよ」
「ああ。礼を言う」
姿が変わることになれないのか、目を丸くしているおじいちゃん。
「ただいま。お土産はありませんよ」
ちょっと離れたところに出て、位置を確認して戻る。【気配探索】は便利ですよ。
「おかえりなさい」
丁寧なハティとファレル。
「期待してねぇよ。おかえり」
カディがぞんざいな返事をする。
「おかえり」
声をかけてきたミナに抱き着く俺、あったかくて柔らかな、このお胸があれば生きていけます。
「ほれ、出発するぞ」
お胸を堪能してたら、カディにべりっとはがされました。
そのままハティに引き渡されて、またぐるぐる巻きですよ、ぐるぐる巻き。児童虐待でそろそろ訴えようかと思います。飴をくれたんで、今回は許しますけれども。
「じゃあ全部森とかじゃないんですね?」
「ええ」
暇なので、行く先がどんな町か聞いていたら、地理の話になりましたよ。
ちなみに、トローアは豚牛が目当てで行く町ですので、牧草地に囲まれたのどかな町です。ちょっと足を伸ばすと、規模はは小さいけど迷宮が点在してます。ただ、ドロップはあんまりよろしくないみたいで、人気は無しです。
俺は魔物を倒せればいいので、人を気にせず狩れるのは大歓迎です。ここで、カバラの迷宮のお手入れが終わる頃まで、魔素取得に励む予定です。
で、今は地理のお話です。この世界は、大部分は荒れ地で、森がパッチワークみたいな感じで点在してるんだそうです。荒地でも迷宮から食料を得たり、資源を得たりで、人が住んでるそうです。厳しい環境でも、金目のものに群がってるんですね。
地形や環境については、オネェの神様、両極端そうだもんねぇで、納得です。地球だったら、地形から環境に影響を与えて、天候が地形に影響を与えて〜で、そこまで極端にならないと思うところですけれど。
「あとは水での魔素中毒ですか。定期的に神殿に行けばいいだけですが、場所によってはお金がかかります」
「水の魔素中毒?」
初めて聞きましたよ?
「ああ、ロゼは心配ありません。魔法を放つ時に一緒に放出しているはずです。ほとんどの水は、そばにある迷宮の影響を受けて、魔素が混じります。取り込んだ魔素を自身で体外に放出する方法を持たない者は、神殿や魔導師に排出してもらうのです」
これは、迷宮に長くいる冒険者も同様です、とハティが説明してくれる。
その集めた魔素がほしいです。排出なんてとんでもない! 俺の美味しい、日本の料理に化けるものですよ!
そんなこんなで、目的地のトローアの町到着! 途中で村人が言うところの「ちょっと強めの魔物」が出たけど、こっちが過剰戦力でした。ミナ一人でもいけますね!
帰りを考えると、ミナ一人でいけないと困るとも言いますけれども。護衛されてるはずの俺も参加するけどね。
「おお?」
町というだけあって、木の柵で囲んであった村とは違い、低いけど塀がめぐってます。
さらに大きな都市になると、カディより大きな市壁がどーんと建つみたいだけれど、町としては立派な方だそうです。
「基本は王が国全体を治め、侯爵が地方を治め、伯爵が都市を治め、子爵と男爵が町を治めます。侯爵はある程度力を持っていて、王にも意見できる立場の者が多い。子爵と男爵では子爵の方が位も治める町の規模も大きい。王族から分家した公爵というのもあるけれど、これは名のみで王都にいる者や、領地を持つ者など様々です」
ファレルが説明してくれる。
上の爵位の人の下に、爵位持ちがぶら下がってる時もあるみたい。どの爵位の人が治めてるかで、都市や町を取り囲む壁の種類が決まってるんだって。下っ端には軍備を整えるのに制限があるかんじ?
そういえば家康さんも、大名が勝手に城造ったな!? とか、石垣造ったな!? とかやってたもんね。
ファレルの家があるカバラは都市扱いで、公爵領だって。ただし、数代前から王都にずっと住んでて来たことないって。遠縁の伯爵が代わりに治めてるそうです。俺は冒険者ギルド経由で税金を搾取されてるので、あんまり意識しない存在だけど。
ファレルは家持ちだから、徴税官にも払ってるはずだけど。働いては税がかかり、売っては税がかかり、門をくぐっては税がかかり……。ちょっと多くないですかね? さらに神殿からもお布施という名の集金があるんですけど。
「なんとなく理解しましたよ。だからとりあえず、可愛い娘さんがいる宿屋に泊まりましょう。お胸の大きな未亡人さんでもいいです」
どっちも鉄板ですよね!
「……」
笑顔のまま無言なハティ。
「よし、引退した冒険者の親父の宿屋を紹介してやる。見てくれは怖いがいいやつだし、安全な宿だ」
何か決意したようなカディの顔です。
「可愛い娘さんがいるんですね?」
「いない」
抗議しますよ!!!!
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