第25話 箱庭の地図

 本日は迷宮はお休み。

 ミナにもお休みで自由行動でいいよと伝えてある、勇者を探したいみたいだしね。なお、オネェが何か言ってくれたらしく密かに探すミッションになっているようです。


 ファレルは魔法陣を売りに、というかお友達と会うらしく、もう出かけている。ここに住む時に色々尽力してくれた人なんだって。ミナと相談してこの商人さんには紋章のことを告げて、噂を集めてもらうんだって。


 噂が集まったらそれはガセですよ!


 本日はノアールで色々買い込む予定。ただ今ノアールに変わると眠さマックスな気がするので、午前中はおとなしくせっせと生産です。


 眠いのはもちろん昨夜脱走したせい。


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ノアール=フジヅキ

存在レベル14(魔素*131/140)

生命*341/341 魔力*3/3

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 結果、このようになりました。魔力、魔力はいつ二桁になるの? 十五からは上がりにくくなるんだよね?


 代わりと言ってはなんだけど身体能力が上がって、ホロルくらいなら三羽に襲われても平気だった。襲ってくるのに慣れて冷静に対処できるようになったからとも言う。ノアールの能力はさすが極振りとしか言いようがないです。


 蜂は走りながらミナと同じように頭と胴の継ぎ目を斬りとばした。駆け抜けてから素材を取りに戻るのはちょっと間抜けだが、倒しやすいのだからしょうがない。


 それよりも解体に手こずって大変、ファレルの手は魔法の手だと思いました。キャタピーの糸腺もホロルも解体するたびロゼに変わって手を洗った、不便すぎる……。


 ファレルみたいに手袋をして、あとはお手拭きで拭くだけとかにするべきかな?


 とりあえずお昼を食べたら脱走予定なので、それまでせっせとパンツをつくったり、魔法陣をつくったり、本を読んでます。現在は魔法鞄のリベンジ中。


 そういえば井戸は鑑定したら汚染されてた。この町は二十五〜七十メートル地下に水を通さない層があって、雨季に降った水が溜まってる。


 水を通さない層が平らじゃないのかな? 三十メートル掘っても水が出なかったら、少し離れたとこに掘るんだって。


それはいいんだけど、水が出なかった穴は場所によってはトイレやら芥を捨てる穴として……。そりゃ地下水汚染されるよね!


ファレルんちだけじゃなく町全部トイレ革命しないと無理! ノアールで水出しても、雨季に雨水と一緒に染み込んで地下で混じっちゃうからアウト!


 こっちで得た知識と日本での知識で予想しただけだけど、トイレと水に同じような菌だらけだったんで当たってるはず。


 村はどうなってるかわからないけど、町でも村でも下水見ないね! やあねー!


 ロゼでせっせと魔法を解除する。解除方法は光魔法の【ディスペル】、かける時に触媒使ったり何かの力を借りたりしてなければ、自分でかけた魔法は簡単に解ける。


 昨日ミナが戦利品を入れる袋は洗っておいてくれた。寒い割に乾燥してるんできれいに乾いてる。この町の周辺は短い雨季以外雨はほとんどなくて、雨季が終わった後急に暑くなるんだって。


 全部解いたら庭に持ち出して【空間拡張】と【軽量化】をせっせとかける。魔法陣で三倍の容量とかバリエーション覚えました。ギルド職員の目を気にする必要がないように売り払う素材を入れる用の袋です。


 【空間拡張】は十倍で、【軽量化】も十分の一で打ち止め。多分これが物にかける限界なんだと思う、さらに上位の魔法で何かあるかもしれないけど。なお魔法鞄の中に魔法鞄は入らない模様。


 うーん。できれば食材保存とか欲しいんだけど、W魔法は二つ同時が故のWだしね、三種類は一度に使えない。暑くなるっていうし、とりあえず迷宮に行く時は氷魔法で皮の水筒を凍らせて入れとけばいいかな? 


 ゲームでは攻撃魔法と火山地帯に行く時にかける地形ダメージをなくす魔法、武器へのエンチャントしかなかったから、ダメージを出さずに凍らせる魔法と、コップに入れる氷を出す魔法は魔法陣で描いてみようと思ってる。


「じゃあこの地区から出るなよ? まあ魔法が使える状況なら何とでもなるだろうけど」

ようやく昼間の一人歩きです。


「はーい! いってらしゃい」

顔をあんまり出すなと、フード付きのポンチョみたいなのを着せられました。ミナがいなくなったらノアールに変わるんだけどね! 


 まずは大物家具搬入用の魔法鞄ならぬ魔法袋をレンタルする。対象が入り口通らないとそもそも入らないからね。似たようなのを作ろうと思ってたけど、ファレルがレンタル屋があるって言ってたので。


 ロゼが派手すぎるんでノアールは目立たない方向で慎重に! こっちの体の時は色々マイナス面を考えるんだが、ロゼの時は考えてもしょうがない〜ってなる。胸と筋肉への執着が丸出しだし、やっぱり体が幼いと脳も幼いんだろうか……不安だ。


 まずベッドフレームとマットから。布団一式、これはロゼも買ったのでサクサクとすむ。箱庭の家に一旦運び込んで次。


 椅子とテーブルから鍋釜、食器。家の修繕用の道具一式、農具一式、シャベル、ノコギリ……は魔法で切ればいいか。


 次々と家の土間に運び込む、配置は後で夜にでもゆっくりやる予定だ。台所用品一式を先に配置して料理をば! 


 井戸から水を汲んで来てかめに移す。面倒だから流しは水が流れるようにしたいなこれ。


 竃に設置されてた鉄鍋を軽く拭いてラードを落とす。ホロルのソテーです、だって調味料が岩塩と乾燥ハーブなんだもん。あと蜂蜜。ラードはメールのだって、やっぱり脂の多い魔物っぽいね。


 皮面をぱりっぱりに焼いたホロル。鶏より味は淡白というか、ささみっぽい。濃すぎる味付けに辟易してたのでそれでも美味しい。食中毒防止と保存のために解毒作用のあるハーブ満載だったり、塩がぐりぐりに塗りたくられてるのが通常なんだそうな。


 肉の保存は燻製か塩漬けが一般的で、カバラの周辺には薪にするようなものはないから必然、塩漬けになる。燻煙したものもあるけど、それは乾燥ハーブを燃やして匂い付けしてるだけのようだ。


 近くで岩塩が取れるので塩はお安い。が、塩じゃないのも混じってるのでとりあえず使う分を煮て精製しました。日本にいた時みたいなオシャレな岩塩じゃないのだった。茶色いよ!


 おやつに買ってきたリンゴをかじり、本日の予定を組み立てる。予定もなにも草を刈って畑をつくるだけだが。葉物も欲しいし、ニンニクと生姜、胡椒あたりは欲しい。全ての味をカレーにしてくれるカレー粉も欲しいけど、あれは何種類スパイスつかってるんだか謎だしな。


 こっちのリンゴは小さくって酸っぱいです。どっかから運んできたらしくって、新鮮とはいえないし、お菓子に使ったほうが合いそうだ。


 台所に一人用の机と椅子を設置してしゃぐしゃぐとリンゴをかじりながら、フォルダを見る。果樹というか木は要求される魔素が50、数が99本ずつ、野菜というか草は10で999本ずつ。昆布やワカメなんかも混じってるってことは海があるのかここ? 確かめなきゃ。


 個人でそんなに食べない気はするが先が長いし、ちゃんと下調べして計画的に植えたほうがよさそう。全滅したら絶対泣く。


 試しに、フォルダのキャベツを【鑑定】すると出てくる説明を読む。育苗期に虫からの食害などを受けやすい作物なんでちょっと育つまでポットのままで育てようとか、夏まき冬どり、秋まき春どりとかけっこう細かく育成方法が書いてある

  

 食害は平気かな? なぜならここに虫はいない! 受粉とかのために、益虫調べて虫取りもしてこなきゃ。


 箱庭を歩いて良さげな場所を探しつつ地図を作成。太陽の場所から推測するに家の入り口が向いてる方が南、この箱庭オネェが色々作れるように整えてくれただけあって狭いところで気候が変わる。でも果たして四季があるのかどうか不明、フォルダにあった野菜的にあるとは思う。


 あと、元々生えている植物を【鑑定】してもそう思う。秋に実をつけるとか書いてあるのもあるから。ここの植物はこの世界の人が広く利用しているものを用意してくれたらしく、「焚きつけに使われる」だの「家具を作るのに向いている」だの「よく使われる毒」とか説明に出てくる。


 毒にツッコミ入れたけど、結構多い。大抵は「用い方によっては薬になる」とも出てるけど。よく使われるってなんだよく使われるって。

 

 北の方には山もあって山菜もいける様子。乾燥気味なところも湿気が多いところもそれぞれあるので本当に何でも採れそう。


 海は入り江のようになってていくつか岩場と砂浜とあった。海に囲まれてるわけじゃなくって所々が海。箱庭の終わりは、曇りの空の色みたいな空間で突然途切れてそれ以上いけないので海の先も同じ感じだと思う。


 海へと続く川も見つけた。基本この川の周辺で米とかワサビとか水が必要な植物が育てられるのかな? 


 歩いてメモをとるだけで夕方になってしまった。ファレルの家に戻ったら地図の写しを作って、畑や水を湧かせる位置とか果樹を植える位置を検討しよう。


 ご飯を買って帰る。暗くなってたので叱られた、小学生か! いやまあ見た目、推定五才ですね。申し訳ない。







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