第24話 ホロルとキャタピー

 五層の敵一匹目はホロルという飛べない鳥。飛べないといっても二、三メートルの距離は低空飛行できるようだ。


 気をつけるのは長い首での打撃、大きさは白鳥くらい? 鶏よりは大きい。まあ、こっちに来るまでに魔法で倒してしまうんだけど。迷宮は通路が狭いんで狙いがつけやすい。


「ホロルは羽根も利用されますが、もも肉が人気ですね」

どうしますか? と言外に聞いてくる。ファレルは人に説明するのが嬉しいタイプ、でも血の滴るホロルを持って笑顔を向けてくるのはなかなか猟奇的。


「羽布団ができる?」

「羽布団はもう少し羽根の柔らかい種類ですね。ホロルが利用されるのは安価な矢羽などです」

「じゃあお肉!」


 羽根をむしるところからかと思ってたら、何ヶ所か切れ目を入れて皮ごとき始めた。あっという間に白っぽいささみみたいなもも肉になる。


「足がつきっぱなし……」

「偽物防止に大抵の肉は足がついたまま売ってるよ」

ミナの説明に日本はパックに入って売ってたんですよ、足が結構怖いですよこれ、と心の中でツッコミを入れる。


 【精神耐性】あるし、自分でも殺してるんだけど、今までで初めての赤い血だったのでちょっと動揺中です。


 蜜球を入れる袋も、ホロルのもも肉を入れる袋も八倍にしてあるのでたくさん入る。俺の魔法鞄の効果がまだ切れてないから、一日は平気だろうってことで。ミナとファレルのも広げといたよ!


 ミナが大喜びでいっぱい詰めて、効果が切れる前に出しとかないと大惨事ですよって、ファレルに注意されてた。


 そういうわけで、蜂の巣がそのまま一個入った袋もある。あとでこれは巣蜜をとったり蜜蝋にするんだ、ノアールが。


「ここはなんか苔が少ないね」

ちょっと足元が薄暗い。


「キャタピーが食べてしまうんですよ。ですから五層ではこうして時々胞子を飛ばしてやるんです」

ファレルがそう言って、壁についてる光苔に触れる。


「おお?」

ぼわんと光の粒子があたりに広がる。


「あんまり吸うなよ。普通は大丈夫だけど、弱ってる時に吸ったやつがまれに咳の度に胞子を吐く病気にかかる」

「うわー」

それは完全に肺に苔が生えちゃってますね! 


 キャタピーは口から糸を吐いてくる前に仕留める。


「よく見つけられるな」

「僕も魔法が当たって落ちるまでまったくわかりません」

キャタピーはあまり動かず、迷宮の壁と光苔に合わせて体色を変えて潜んでいる、見つけにくい魔物なのだ。


 ミナとファレルに感心されてるけど【気配探索】あるからね。キャタピーは糸腺しせんっていう糸の素が入ってる部位が素材になるそうです。


 解体に時間がかかるので今回はパスするって言ったら、見つけにくいからホロルより高いと言われて前言撤回。ホロルの袋はすぐいっぱいになりそうだし、なったらキャタピーだけにしよう。


 一応、解体方法習ってるんですが、キャタピー力加減が難しい! 糸腺潰して中身出ちゃったり。ロゼは【ウォータ】で手が洗えるからいいけど、ノアールではやりたくない。


「ああ……。水も使えるんですか……そうですか。風と地が両方制御できるのならば、水の制御くらいしますよね」

何かまたファレルがぶつぶついってるけど気にしない。最初はそっと洗ってたんだけど面倒になりました。


 手を洗ってご飯を食べて、狩りを続行。みんな一気に下に降りられる階段側から入ってるらしく、他のハンターとは会わないまま思う存分狩ってます。


 たくさん敵が出た時の撃ち漏らしはミナが危なげなく倒してくれるし。


ミナは私を抱えてても余裕みたいだけど、おとなしくファレルに移動しました。ダッシュをかけられると酔います。


うーん、範囲魔法欲しいなあ。【熱風】とか【レイン】は出たけど、範囲とはいえ弱い状態異常つける魔法だし。まとめて倒せる何かが欲しい。


 いや、そんな大雑把な攻撃してちゃダメだね。ゲームじゃないし、ちゃんと状況に合わせて使い分けたり色々できなきゃ。がんばろう。


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ロゼ=フジヅキ

存在レベル15(魔素*193/1500)

生命*68/75 魔力*264/303

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 帰るころにはこんな感じ。いきなり次のレベルになるために要求される魔素が十倍に。どうやらここからはサクサク上がるとはいかなくなるみたい。十五歳で成人とか言ってたなそういえば。

 

 帰りは元来た道をさかのぼる感じで。何匹か魔物に遭遇したけど、来たときより断然少ない。蜂とホロルは移動範囲が広いみたいだ。


「なるほどレッサードラゴン狩りフィーバーが起こるはずだね、敵が狩られてるし大勢で行けば怖くない」

「私のパーティーは集団とはあえて距離をとったよ。案の定、十八層を超えたところで敵をさばき切れずに崩壊してた」

「臭いにつられてたくさん寄ってきますからね、簡単に倒せない敵に遭遇した時点でそうなるでしょう」


 むう。やっぱり個々がちゃんと対応できる敵の範囲じゃないとうまくいかないのか。戦ってる間に新たな敵のおかわり来ちゃうのね。


 さて本日はギルドで蜂の巣を残して他は売り払いました。ホロルを残すつもりだったんだけど、料理できる人がいないことが判明。明日はお休みだけど、明後日も行くし今回はあきらめました。


 案内人であるファレルに一割渡すので査定自体は全部して貰うんだけど、ミナが持ってる分はいいって。今、半分ミナが持ってるんだけど。


 帰る時にわざわざ普通の袋に移してるから何かと思ったら魔法がバレないようにですね。お手数おかけします。ファレルには居候もさせてもらってるし、別途お支払しよう。


 キャタピーの糸腺からは糸がとれて、どうやらこれが先日つくったパンツの布の元だと判明。


 雨季は夕方にどばっと降るけど、基本乾燥している岩だらけのカバラは色々迷宮頼りだけど、天候に左右されずに物資が手に入るのは大きいみたい。カバラはこれですごく人口の多い大きな都市で、普通の町の規模はもっと小さいんだってさ。


 周辺が岩だらけなのも壁を広げるのに便利で、それも大きい。カバラの領主は代々、【軽量化】の魔法陣を安く――それでも高い閲覧させる代わりに、防壁を広げるときは必ず協力するよう制約させてるんだそうだ。

 

 ファレルが持ってた制限付きの魔法陣も、どうやら領主館で閲覧しまくったせいで劣化した魔法陣が放出されたものらしい。もちろん閲覧させるのは写しで、原本は大切に保管されてる。


 冒険者ギルドの【空間拡張】も同じ制約か、カバラの案内人を五年つとめるとかそんな制約をすれば安くなる。ハティは何も言わなかったけど、制約しちゃうと町の移動も条件がついたりするらしいし、色々面倒なのでお金ですませて正解だったと思う。


 そういうわけで町の拡張や経済に影響のある【空間拡張】と【軽量化】は場所によっては持ってる人が多い。相性や能力がないと覚えられないけど、他の中級や上級魔法よりは普及してるって。


 ただ、俺のはちょっと倍率がおかしいから隠すよう教育的指導がファレルから来た。閲覧できる【軽量化】は三分の一軽減に固定された魔法陣、この都市で知られている【空間拡張】の最高は、例のバルグ筋肉さんについてった案内人が持ってる五倍ですってよ、奥さん! 


 しかもその人には魔法陣を描く技能がないそうで、俺の八倍な上に魔法陣が描けることがばれたら色々やばい模様。まあ、あの買い取り用の袋で中身全部出すとかしなければ、ばれることはないだろうとも言われたけど。


 露店で買った夕食を食べながら色々注意された次第。


 



 






 




 



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