第15話 がんばる。

「はっはっはっ」

愉快愉快。


 結局俺の方が見つけるのが早いし、魔法で一撃だしで、ミナに肩車してもらって移動中です。


「ちょっと、ちょっと待ってください。走らないで!!」

ファレルが息を切らせながら止めてくる。


「あ、悪ぃ」

声をかかられるまでファレルの存在を忘れていたらしいミナが足を止める。


「い、いえ。こちらこそ案内人なのに着いてゆけなくって申し訳ない」

ぜーぜー言いながら謝ってくる。


「つい夢中に」

「たくさん倒せました」


 百匹近く倒したんじゃないかな? 二、三匹まとめて出て来たりしてたし。あと森に出た小鬼は魔素2、たまに1か3だったけど、ここは平均3くらい。


================

ロゼ=フジヅキ

存在レベル8(魔素*46/80)

生命*29/38 魔力*97/155

================


 短い間で3レベルも上がった!


 ファレルのガクガクする足が戻るまで休憩。ミナは壁に寄りかかって立ってるけど、俺とファレルは座り込んで水分補給。


「ついでに昼も食っちまいな」

「ミナは?」

肉挟んだやつ買ってただろう? そう思って首を傾げる。


「案内人と交代」

「すみません、普通はみなさんが先に休憩をとって僕が見張りに立つんです」

ミナさん? 皆さん?


「場合によるだろ。人数が多けりゃ半々、斥候がいればそいつに任すとか。快適さより安全重視だ」


 今回は魔法を使える俺がいるので、見通しのいい長い通路の途中で休んでいる。パーティーの構成や敵によって、休む場所も選ぶんだって。


 俺は厚切りベーコンを出してかじる。スモークされてるやつだ。そしてやっぱりちょっと脂が多い。焼くつもりだったんだけど、火を起こしたりはしないんだろうか? 冷静に考えたら薪がないんだけどね!


 聞いたら、長く潜る時は火を焚く装備を持ち込むこともあるって。魔法鞄持ちが薪を持ち込むか、魔道具をレンタルするか。お金はないけど力持ちは薪を担いで入る時もあるそうだ。


 今食べてるお昼と同じで、中で消費しちゃうものは消費しちゃって、その分迷宮の何かを持ち帰る感じらしい。


 火を焚いちゃいけない場所とか、ひとところに留まっちゃいけない場所とかも多いみたいだけど、そのへんは案内人がルートとか調整するんだって。


 蜂蜜酒で脂っぽくなった口の中を流す。


「そういえば軽量化の件ですが、あとで魔法陣をお見せしますね」

「え? いいの? いくら?」

ファレルの太っ腹! どっちかっていうと痩せてるけど!


「欠陥品なので料金は要りません、代わりに次からも案内人として僕を雇ってくれませんか? 僕がついていけなくなるまでで構いませんので」


「えーと。ミナは二ヶ月だけの約束で付き合ってもらってるんだ。それから先はどうなるか分からないから、ファレルも二ヶ月の約束でもいい? 魔法陣のお金も払うから」

「はい」


「待て。なぜこの娘に興味を持つ?」

ミナからまったがかかった。


「こんな幼いのに魔法を使い制御する、一撃の様子から魔力も強い上に、量も多い。興味を持つなというのは無理です」

ん? 制御? 魔力が強いのと量は一緒じゃないの?


「利用するつもりならば唯ではおかん。そういう契約だし、保護者からも言い含められてるからな」

保護者……。どっちだろう?


「あ、いえ。僕はそういうのを趣味で研究してますが、どこかに発表するとかはなくって……」

「ではそれを制約しろ、趣味などと怪しすぎる」

「でしたら神殿で制約を。――個人が特定できない範囲での考察は書き留めることを許可願います。無論公開の予定はありません」


 交渉成立しました。制約も普通はギルドに出す制約文のことらしく、自分から神殿と言い出したファレルにミナが黙った。神殿の制約は奴隷契約にも使われるし、一番強烈なやつ。


軽量化の欠陥って何か聞いたら、効果が半刻しか持たないことだって。こまめにかけ直さなきゃいけないし、結構魔力も使う。


外での荷運びには便利だけど、魔物との戦いは一刻以上かかることもざらだそうで、戦いの最中に急に重くなると〜と説明されて欠陥という言葉に納得した。


「普通、定着時間は使用者の才能によって決まったり、魔法を使った際の環境に左右されたりするのですが、僕の軽量化はきっかり半刻なんです。夏の長い時間でも冬の短い時間でも」

欠陥だといいながら、面白いでしょう? と、どこか嬉しそうに聞いてくる。


 魔力の強さは魔力量とは別なんだって。ステータスで見えてる魔力っていわゆるMPだったっぽい。強さの他にも持続性やら属性の相性やら色々あって何がいいかは使用用途によるみたい。


「ん? もしかして空間拡張も効果時間ある?」

「効果ではなく定着ですね、あります。どちらも永続的に定着させられる技量を持った方は大変珍しい。カバラの案内人にも魔法鞄を持った方がいますが、一年未満で替える方がほとんどだそうですよ」


 ビスケットをかじりながらファレルの話を聞く。このビスケット、素朴な味で牛乳が欲しくなる。


「定着切れたら中身はばら撒かれちゃうのか……」

はじけとぶ鞄が脳裏に浮かぶ。


「魔法は定着しても、魔素は段々と抜け落ちます。そして魔素がなくなれば、効果は切れます。先ほど話に出た魔石をつけて魔素の供給をするんです」

「なるほど」

定着は本体の使用期限で魔石は乾電池か。


「定着が不安定になると魔素の減りが早くなるので、すぐ魔石がダメになる。そのことでも期限は分かりますから大丈夫なんです」

大丈夫じゃないです! 俺の鞄、魔石つけてない! 幼女のはそもそも重くてほとんど荷物を入れてないから平気だけど、ノアールの鞄が……っ! 


 やっぱり魔石とるべきだったかな? でも弱いとほとんど出ないっていうし。さっさとレベルを上げて出やすい敵を狩ったほうがいいよね。


その間に魔石の付け方とか学習しよう。鞄買ってきて魔法かけるだけじゃダメなのね……。


 途中、匂いにつられたのか小鬼が二度ほど来たけど、こっちに来る前に魔法で処理。ご飯の後も順調。


「あ。帰り道……」

「分かるから大丈夫だ」

「大丈夫です」


 そろそろ帰る頃になって愕然とした俺に、二人が答える。


 ミナが言うには、分かれ道には記号が壁に彫られてて、地図と付き合わせれば大丈夫。ファレルが言うには、それに加えて来た道は覚えているから大丈夫。


 浅い階層はハンターギルドで地図が売ってるし、案内人も地図を持っている。そして地図がない深い層は案内人が覚えて、地図に起こして売るんだって。他に魔物の情報なんかも。深い階層ほど高いし、ルートが安全な方が高かったりもする。


「ハンターは初めて踏み入る層には、光苔を壁につけて迷わないようにするんだ」

「なるほど、それで繁殖してるんだ?」

「浅い方ほど昔に撒かれてるからな、広がってるのさ」


「地図が出回る頃には広がりすぎて目印にならなくなっています。ちょうどいい具合なんですよね。あと、迷宮内で事故などで分断されることもありますから、地図は個人でも持っておいた方がいいですよ」


「うん、ギルドで迷宮の手引き読んだから買ってある」

ただ、記号があるとかは完全に情報が抜けてた。やっぱりこの続きは有料で! を買うしかないのかな。


 それにしても真っ暗だと難易度高いけど、足元が確認できる明るさがあれば難易度は下がる。ハンターがたくさん来て、その階層の地図もたくさん売れる、なるほどいい感じ?


================

ロゼ=フジヅキ

存在レベル12(魔素*111/120)

生命*38/57 魔力*151/228

================


 レベル12ですよ、奥さん! 生命も村人に迫った感じです。でもね、なんかやっぱり迷宮内歩くと減るんですよ。おかしいなって思ったんだけど、単純にリーチが短くて障害物が多くなってるのと、早足で歩かないとミナたちに追いつけないことが原因というか、結構な運動をしてる状態なんだと気付きました。


 なので肩車続行です。


 魔法もウォール系を覚えた。【ファイアウォール】とか【ウィンドウォール】とか敵の攻撃を阻むやつ。


 どれも魔法の壁を出現させて攻撃を阻む効果だけど、ファイアは近接攻撃で敵がぶつかるとダメージを与えられるし、ウィンドは飛び道具に対する効果が高くて、光は魔法に対する効果が高い。氷は効果は弱めだけど、飛散することで力を分散して大きな攻撃も一度は防いでくれる。


 色々覚えてると便利。土は確か追加効果はないけど一番防御力が高いんだったかな? 水は覚えてない。覚えてないけどウォータは手放せません、主にトイレで。ゲームと違って攻撃に使えない魔法な気がするけど、一番大事な魔法だよ! 火属性の敵以外に使えない魔法認識でいてごめんなさい!


 村は木の皮っぽいやつだったけど、迷宮都市はパン包んでたあの皮が置かれてたよ? 木の皮より断然良かったけど、良かったけどさ! 


「外だ〜」

充実した一日でした! そしてやっぱり外は気持ちいい! そして肩車より抱っこが気持ちいい! 装備外れればなおいい!


「おう、お疲れ様」

「ミナ、ありがとう。ファレルも!」

レベルがさらに一つ上がって、魔力が251ですよ。ファレルを越しました! まあ、回復が驚くほど早いので今覚えている魔法程度の消費ならすぐに回復しちゃうんだけど。


「こちらこそありがとうございます。あと二回実績を積めば案内人ギルドでのランクが上がります。それに大変興味深かった……」

「解散にはまだ早い。神殿に寄る約束だよ」

「ええ。――魔法陣はどうしましょう? 神殿経由では遅くなりますし、予定がなければ明日、僕の家にいらっしゃいませんか?」


「ミナの予定は大丈夫?」

「変なこと聞くね、大丈夫だよ」

変だったか?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る