第3話 箱庭の神域

「能力と装備は移してあるけど、こっちの世界に概念の無いものは消したり置き換えさせてもらったわ。でも今は使えないのも多いわね、魔素が足りないとこの世界への働きかけが弱いから」

能力ってあれかゲームの魔法とかスキルのことか?


「それ一覧とか見ることできるか?」

「自分を【鑑定】してごらんなさいな。思うだけで大丈夫なはずよ〜、もっとみたいと思えばすこし詳しく出るし」


================

ノアール=フジヅキ

存在レベル1(魔素*0/10)

生命*99/99 魔力*1/1

属性*全属性

才能

【物理攻撃*S】【物理耐性*S】

【武器扱い*S】 【剣術*S】

【武芸*S】【生命回復*S】

【薬扱い*S】【料理*S】

【建築*S】【農業*S】【手仕事*S】

【精神耐性*S】【祝福*S】

スキル

【気配探索】【鑑定】【言語理解】

================


「スキル少なッ!」

「スキルとしては三つ出てると思うけど、それも普通はないの。でもこっちで生活するには、ないとすぐ死んじゃいそうだし、特別サービスね」

ウィンクしてくるオネェにちょっと慄く。


「基本、こっちは身体能力依存よ〜、特に物理はね。アナタの能力なら二段突きとか普通にできるはずだわ。魔法はちゃんとスキルにあるはずよ? ないと魔力が高くても自分では使えないから。生命と魔力は戦いやすいように数字に置き換えてみたけど、消費はその時の体調にもよるから気をつけて」


 どうやらスキルは全自動で発動するわけではなく、自分で動き、繰り出さねばならないらしい。


 生命も魔力もある程度の目安、ということのようだけど、確かにゲームは状態異常はあってもその日の体調とかはないからな〜。


「あ〜、さっきの幼女の方にも望めばなれるのか?」

「そっちも思いのまま、ね」

だからウィンクは要らんと言うのに、投げキスはもっと要らん!



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ロゼ=フジヅキ

存在レベル1(魔素*0/10)

生命*20/20 魔力*80/80

属性*全属性

才能

【魔法*S】【魔法耐性*S】

【魔具扱い*S】【癒し*S】

【精霊友好*S】【魔力回復*S】

【魅了*S】【支配*S】【調教*S】

【裁縫*S】【錬金*S】

【精神耐性*S】【祝福*S】

スキル

【全魔法】

【気配探索】【鑑定】【言語理解】

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 ――フジヅキというのは俺の名前だろうか。自分の名前が記憶にない、何を覚えていて何を覚えていないのかが分からないレベルだなこれ。


「いや、待て。なんだこの【魅了】とか【支配】って!」

才能はキャラの傾向から納得のものが多い、戦闘メインだったんで真面目にやってなかったが、【料理】と【裁縫】【錬金】はゲームで選んだ生産だ。


 ノアールは魔法が使えなかったので、ソロの時の回復手段が薬だった。【薬扱い】は「調薬」と「回復効果アップ」を持ってたから、複合かな? 料理もステータスアップの付与効果がつくのでそれ目当て。


 だが他は覚えがねぇ!! 特に幼女にくっついたこの【魅了】と【支配】が不穏すぎるだろうが! 挙句に【調教】ってなんだよ!


「【魅了】と【支配】はあれば死ぬ確率が格段に下がるからつけといたわぁ。おかしな具合に効いちゃってもアナタなら男にすぐなれるし。あっちにはわざと【魅了】も【支配】もつけてないのよ〜」

え、待って。男の方にあった方が色々捗るんじゃないのか?


「運命の恋人はフェアに見つけなきゃね、うふ」

バチコーンっとウィンクをされてげんなりする俺、オネェが無駄に乙女だ。


「【調教】は魔獣が多いからね、その対策。気に入ったのがいたら番犬にでもすればいいわ」

……正しい意味での【調教】だった。いや、これ並んでるものから言って誰でもアウトだと思うだろう? 思うよね!?


「まあ、人にも効くしね」

「やっぱりかあああああああああっ!!!!」

アンタは幼女をどっちに向かわせたいんだよ!


「あ、あと筋肉もちゃんと自分で鍛えるのよぉ! アタシみたいに」

ぬああああああ! 返せ戻せ! 俺の筋肉! なんで細くなってんだよ!


「装備の方はこっちの物質で近いのに置き換えたわ〜。あとアイツの世界の食べ物も出せるようにしたけど、ここでだけね」

「飯が出せるのか! って、ここ?」

おおお、あのドライな神(?)様、ちゃんと聞いてくれたのか! とちょっと感動しつつもオネェのセリフに引っかかって聞き返す。


「ここは一種の神域よ〜。アナタを一旦受け容れる為に作った箱庭みたいなものね。自由に使ってくれていいけど、さっき言った装備以外は持ち出せないから、これも注意ね」

オネエの言葉にただの森だと思っていた周囲を見回す。うん、森ですね。不思議空間っぽさは俺には感じられない。


「食べ物はシャシンだったかしら? その分だけ変換できるようにしてあるわ。取り出すとシャシンは消えちゃうから気をつけてね」

「残念、無限じゃないのか」

「こっちの世界にも似たような食材があるから、そのうち自分で作れるんじゃないかしら? あ、【言語理解】は自動発動よ。ただ翻訳するだけじゃなくって、ほぼ同じ物ならアナタの世界の言葉に変えられて聞こえるし、逆にアナタの言葉もこの世界の言葉に置き換えられるわ。食材探すのに便利でしょ?」

字は読めるけど、書く方ダメだから気をつけてね、とオネェが続ける。


「それでね、家を作ってみたの。あんまり大きいと最初は手に余るでしょうし、一般よりはいい農家の家ね。そこの台所でシャシンの確認と変換ができるようになってるわ、変換するとき魔素を消費するから気をつけてね」


 魔素は貯めても置けるが、消費して存在レベルを上げる事が出来るそうだ。一般的な存在レベルは、ここでの成人に当たる十五の歳までは年齢イコールレベル、それを超えると自然上昇は緩やかになるそうだ。とりあえず15を目指そう。


「食べ物は無限じゃないけど、代わりに食材になりそうな植物は苗の形で保存しておいたから、ここで育てればいいわ。とりあえず何でも育てられる気候にしといたから」


「俺、農業とかやったことないぞ」

覚えてないから多分だけど。


「大丈夫、【農業】と【建築】、【手仕事】はここで生活するためにつけたのよ。ちょっと今は殺風景だけど、この世界の植物や魚も持ち込んで好きなように整えてね。この世界のものでも、ここでアイツの魔素が混じっちゃったら持ち出しできなくなるからそれも注意ね」

人差し指を添えて口をすぼめるオネェ。くねくねするのヤメてくれないだろうか?


 魔素が混じるものは、大雑把に言うと「成長するもの」だそうだ。なお、俺のこの体はこの世界のものでしか成長しない模様。頑張って成長してね〜だそうだ。


「あと何か欲しい能力ある? あと一つくらいならつけられるけど?」


「なんでこんなに至れり尽くせりなんだ?」

便宜を図ってくれる理由がさっぱり分からない。


「心配しないで、アナタに長生きして欲しいだけだから。アイツの魔素がアナタとアナタが落ちたここにあるの。そのままでも良かったんだけど、それじゃ拡散して消えちゃうだけだから、アナタの体とここに閉じ込めてみたわ。アナタが長生きしてくれれば、アタシの魔素とアイツの魔素が馴染む時間が取れて、アタシがこの世界で作れるものの幅が広がるの。そしたらもっと世界が美しくなるわぁ」

手を組んで瞳をキラッキラさせるオネェ。


 どうやら俺自身がこの世界と馴染むためには、魔物を狩って、こっちの世界のものを摂って存在レベルを上げれば良く、この場所がこの世界に馴染むためには俺がここで農業をしながら生活すればいいらしい。植物が育つ事でここに残る地球の神とオネェの魔素が馴染むって理解でいいようだ。


 魔素は無理やり奪ったり奪われたりがたまにあるそうだが、今回のように穏便に譲渡というのは滅多にないそうだ。俺にとっては穏便じゃないが。


 奪う形で増やした魔素は、すぐに消えてしまうのが普通だそうだ。消えた分だけ奪った者の魔素が増えるので意味はあるようだが、リスクもあって消えないまま世界を蝕み壊す存在として凝ってしまうこともあるって。


「では遠慮なく。何かお勧めあるか?」

「アタシのお勧めはつけちゃったから。人の望みとズレてるかもしれないから一つ残したのよ」


「えーと、幸運とか?」

「祝福があるでしょ?」

祝福は幸運効果なのか。


 人に好かれるのは魅了があるし。


「荷物の無限収納?」

「魔法と裁縫があるもの、そのうち自分でできるし、作れるようになるわよ?」


「……。えーと、不死身とかはダメだよな?」

「そうねぇ、アタシの望みとズレるわね。それに存在レベルが上がれば若々しく長生きはできるわよ?」

頑張って魔素集めろってことだな。


「お金は?」

「ああ、人間にはいるんだったわね! それは別に用意するわ。誰のものでもない忘れられてるお金を移せばいいだけだもの。才能かスキルで他はある?」


 戦闘も回復も足りてる、金もある。あと生きてくために欲しいものは何だ?


「水?」

「水?」

「いつでもどこでも飲める水を出せるように、とか?」

「水を得るための戦いはよく聞くものね、分かったわ〜」

よし、とりあえず砂漠でも水には困らない!


「存在レベルを上げるためにもどうせ外には行かなきゃだし、お肉はこの世界で補充してね」

「ところで【精神耐性】もつけてくれたのか? あとくっついてるSってなんだ?」

うん、とりあえずお気楽極楽に生きていいと理解した!


「精神耐性は元々付いてたわよぉ? Sはランクね。FからSまであって、Sは最高に才能あるってことなのよ」

あー、精神はあれか地球の神に取り乱さうるさくないように色々消された名残か?


「まあここに色々持ち込んでカスタムして行くうちに、アタシの世界と混じって、生き物も普通に出入りできるようになると思うわ。頑張ってね!」

「おう! 適当に頑張る!」

答えている間にオネェは消えていった。


 あ、やばい。家の場所聞いてねぇ!!!

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