第2話 オネェな神

 一番初めに作ったのは剣士系の男キャラ。ゲームを進めると装備できない女性専用装備のドロップが溜まってゆき、最初は誰かと――誰だか覚えてないけど、交換したり売り払ったりしていたのた。


主なクエストをやり終え、周りも2キャラ目を作るというので、余ったレア装備を活用するために、なんとなく作ったのがこのキャラだ。


 正直、画面に映る男のケツと着替えを見飽きたのもある!


 見た目はいいぞ? キャラメイクでそうなるように作ったわけだし。だがしかし、画面の向こうならともかく、自分がそうなるのはアウトだ! 返せ戻せ俺の体!


 そして現実問題、初期装備のストンとしたローブと幼女の短い手足でどうしろと! 360度木ばっかりです、どう考えても森の中! ちょっと動いたら下生えの草とか木で膝下が擦り傷だらけに。


ゲーム製作者よ、サンダル&ワンピースのようなローブ、下は白パンオンリー装備は冒険には向かないぞ。地味でもいいズボンとブーツを寄越せ!


「ああ、いたいた! 思ったより可愛いじゃない」


 突然現れる筋肉質の巨漢。睫毛は上を向き唇はぷるんとテカテカピンク。


「オネェ!?」

自分から思いのほか可愛らしい声がでる。


「妹ができるなんて新鮮ね。そう、お姉さまよ〜」

違う、そういう意味じゃない! そう言おうとしたが巨漢がぎゅうぎゅうと抱きしめてくるというか、締め上げてきたので気道から変な空気が漏れただけだった。


 ぐぇぇぇえ死ぬ!! 死ぬ!!!


「ずっとこうしていたいけど、ちょっと時間がないわねぇ」

口から魂か内臓が出そうになったところで巨漢の腕が緩む。


「これを渡しに来たのよ」

ムキムキのオネェが手をかざすと、そこに黒ずくめの少年の姿が現れた。整った顔をした黒髪の十五、六の子供だ。


「ん? 人身売買は受け付けてないぞ」

異世界の価値観怖いわ。


「これはアナタのカラダよぉ、好きに使いなさい」

体??


「いや、俺の体?」

「可愛い顔で俺は似合わないわねぇ。アナタのカラダは両方とも人形なの。アイツがアナタのカラダは消しちゃったし、アタシがこっちで作ったのよ」


え? ……まあ俺がどんな姿してたか思い出せない時点で消されたのはなんとなく理解できてたけど。新しい体じゃなくて人形?


「アイツが二つのイメージを伝えてきたから二つ、ね。都合でこっちは少年になっちゃったけど」


そう言うと、軽く手を振って少年を消した。一人称については後で考えよう。


「もしかしてノアール? いや、待って。ノアールにしては細すぎだろう! あれ、でも男の体にもなれるのか?」

ノアールは俺がゲームで作ったファーストキャラだ。ちなみに筋肉美な感じの壮年剣士だったんだけど。跡形もないね!!! 


「望めばね」

「おおおお!!」

オネェの言葉にすぐさまそう望めば、幼女からノアールの姿になる。ひょろいけどビバ! ズボン!


「ただアンタって言う存在がまだ世界に馴染んでないから不安定なのよね。馴染まないと消えちゃうから頑張って存在レベル上げてね!」


「消える?」

視界が高くなった。現実世界では幼女は幼女すぎると思います、むしろあっちをぼんきゅっぼんに変えてほしかった。


「そそ。アタシの力、ここの生き物たちが言ってるところの魔素ね。それを取り込めば自然と馴染むわよ。こっちの物を食べたり殺したりすれば自然と溜まってくわ。食べる方は微々たる物だし、すぐ排出されちゃうしから、魔素が多い存在を殺すのがオススメよ」


なるほど、食は体を作るってことだな。そうすると、赤ん坊始まりから育ってないことも不安定さの理由かな? ノアールが少年にされたのもそのあたりが理由か?


「えーと、魔物とかを狩ればいいのか?」

「人でもなんでもいいわよ〜」

勇者フラグと魔王フラグがたった気がする!!! 平凡でいいです、平凡で!


「魔素は生み出すのはアタシだけど、生きてるモノの喜怒哀楽で増えて、長生きした方が世界アタシに戻る力の効率がいいの。アイツは厳密に世界を管理して、生きているモノを増やすことで魔素も着実に増やしてってるけど、アタシは効率悪くってもチマチマしたのは苦手。だから適当にね、スリリングでいい世界になったと思うわ〜」


 地球の神は長生きさせて効率よく回収してるんだろうけど、喜怒哀楽はこっちの世界の方が濃そう・・・だ。なにせ神が濃い、オネェだし。


 なお、時々失敗して世界から生き物が消えて最初からになる模様。また作り出すのに魔素を使うので、その時は一時的に弱体化する。特に誰かと争ってるわけじゃないらしいが、極たまに弱ったところを狙って魔素をごっそり奪ってゆく輩もいるのでやり直しは好ましくはないそうだ。

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