異世界で箱庭を。

じゃがバター

第1話 ドライな神

 こんにちは、幼女です。

 膝まで届く白に近い薄いピンクよりなラベンダーの髪。白い手、白いローブに包まれたぺったんな胸。見えないけれどアメジストの瞳、長い睫毛……。昨日の夜ログインしてたゲームの自分キャラです、本当にありがとうございました。


 あんの野郎っ!!!! これならまだまんまの姿で来た方がマシだわ!!!!



 事の起こりは睡眠時。気が付いたら何かと会話していた。


「あんたひずみなんだわ」

『歪み?』


「随分前にちょォっとズレちゃったの気付かなくってさ〜」

『何が?』


「世界の成長方向が今二つに分かれちゃいそうなんだよね〜。分かれそうな片方全部潰してもいいんだけど、今なら境目にいる一人二人取り除けばまた一つにくっつきそうなんだよね」

『世界の成長? ニュアンス的に未来のことか?』


「あんたから見ればそうなるかな? まあとにかく、何度か壊したけど介入最小限でここまで育てるの大変だったんだわ。あんたこの世界から消すからよろしくな!」

『いや、消すな。そこはゲームのキャラの能力付きで異世界転生とかだろう?』


 会話の間中、俺のいた痕跡が消されて行くのがわかる。学校の机、ロッカーの中のもの、家の玄関に脱いだ靴、キッチンのカップ、部屋の中のもの。そして友達の中の記憶、両親や兄の中の思い出。


 何かが消される度に悲しいような自由になったような変な心持ちがする。パニックにならないのは寝ぼけているからだろうか? 


「あー、作業中うるさくされるとうっとおしいからね〜。その辺の感情先に消しちゃった、分岐の原因残さないように繊細な作業だから」

『ひどい!』


 ……気がする。どうやらこの世界から俺の存在を消す作業中の雑談らしい。


「そうだな〜、全部消すより他の世界に飛ばしたほうが作業楽かな〜。ゲームだっけ? この記憶にあるやつ? この姿でズレとか気にしないヤツが管理してる世界に飛ばしとくわ〜」

『あ、待て! 今、最後にログインしてたのセカンドキャラ……っ! ファースト、ファーストキャラにしてくれ!!! あと飯が不味いのは嫌あああああああああああああああああ』


 いい考えとばかりに「処理」を始めたらしく気配も意識も遠のく。


「おー? 何だかワカンねぇけど分かった! つけとくわ〜」



 などという神なんだかそうでないんだかわからんやつとの会話の末、ゲームキャラの姿でここにいる。ばっちり二番目につくった幼女の姿で。分かったって言ったのに!

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