第2話

 俺はいつも寝ているというわけではない。


 ずっと寝ていると、頭が冴えて眠れなくなる時がある。人間にもそういったことはあるはずだ。

 そんな時は本を読むなりゲームするなりして頭を疲れさせればいい。おそらく前世の俺もそうしてきたであろう。

 だがここは洞窟火山の中。そんなものがあるはずがない。


 道具に頼らなくても暇を潰せて身体を疲れさせる方法。そんなのは筋トレやランニングくらいだろう。

 なので俺も筋トレに近いことをしている。





飛行フロート


 魔法の訓練を行って疲れさせた。





 この世界には魔法が存在する。

 竜というファンタジーがいるのだ。他にも化け物がいたり魔法が使えたりしても可笑しくない。


 魔法。それは魔力という力を上手く利用するための学問である。

 決して何でも出来る万能の力ではない。そこにはちゃんと法則や仕組みが存在しており、その通りに魔力を使わないと魔法は正確に発動しない。



 魔力は魔力機関という部分から作られ、人間の体内にある魔力回路という血管のような器官を循環して増幅、運用出来る。


 ただ、この二つの器官は解剖しても発見はされない。

 学説によると、血管と肝臓の、違う次元の同位置に存在するというのが仮説で、それはまだ立証はされていないが確かに存在するようだ。


 では、どこからそんな知識を持ってきたのか。それは追い追いに。



 それでは魔法の訓練を行おう。


 魔力の循環を行い、魔力路を広げて活性化させる。そうすることで魔法の威力が上がり、同じく魔力回路に戻すと大きくなり、魔力量の増大に繋がる。

 他にも魔法の精度と威力、それに魔力の全体量が上がるそうだ。


 ただ、どんな生物にも限界値がある。一か月しても魔力が増えなければ、魔力量の成長限界ということになる。そのときは使える魔法の種類を増やしたり、威力や精度の向上に努めるのが賢明だ。


 ドラゴンは種族的に魔力の成長が早く、基本的に成長限界はほぼ無限に等しい。



 転生して覚えたのは基本魔法というものだった。

 基本魔法は特に小難しい術式の詠唱や魔方陣を書く必要は無い。

 人によっては、掛け声や呪文などを呟いたり叫んでみたり、杖を振るう動作などのアクションなどを行う。

 それで魔法の精度や威力が上がれば、その人に向いている発動方法に当たるらしい。

 例えば俺は無詠唱で魔法のイメージを思い浮かべ、基本的には魔法名を唱えるそうだ。


 これはすぐに覚えた。魔力を感知してすぐ使えるようになったので次のステップである初級魔法に移行した。

 ファイヤーアローやアイスアローなどの攻撃魔法、基礎的な身体機能強化や魔六障壁などだ。

 これらもすぐに覚えた。大体一日で発動できるようになり、三日ぐらいで使いこなせるようになったと思う。


 次は中級魔法。中級と言っても根本は初級と変わらない。

 魔法矢の場合は複数同時に放ったり更に大きい矢を放つ等、初級魔法を発展させたのが中級魔法である。

 上級魔法もそんな感じである。だから初級中級と学べば十分いける。

 詳細なマニュアルが存在し、記された通りに事を進めると習得出来るので楽である。


「……半径十㎞といったところか?」


 上級魔法の一つ、探知魔法の練習を行う。

 この魔法は文字通り範囲内の存在を探知する魔法だ。通常は何処に何がいるか知る程度だが、精度はピンキリ。

 数十キロ以内に生物がいるとしか判別できない人に、人間が何人でどれほどのサイズの動物や魔物が何体かとか言う人もいる。

 中には範囲内に存在する特定の人物や魔物などを見つけ出し、その上で健康状態やステータスを詳細にスキャン出来る猛者もいたらしい。

 そこまで来るともはや別の魔法である。


 俺の場合はせいぜい数十キロ先までを見通す程度。範囲内にいる生物を探知し、その数や大きさ、あとステータスを軽くスキャンする程度である。


 イメージとしてはレーダーみたいな感じ。

 自分を中心と仮定してどこに誰がいるのか映し出される感じだ。

 輝点の位置で方向と距離を、輝点の眩しさで大まかなサイズを把握していた。そして輝点の上に大まかな状態が簡潔に記されている


 探知魔法を使っている状態を六時間ほど維持する。問題ない精度は少し落ちているがそれでも使いものになる。

 更に六時間ほど経過。そろそろ維持がキツくなってきた。しかしガッツでなんとか耐える。この程度の疲労でギブなんて情けない真似出来るか。

 更に更に六時間経過。限界が来た。維持するのもやっとだ。しかし耐える。ここまで来たのなら限界まで行ってやる!


 その三分後、俺は疲労に屈した。


「こ…これで今日もぐっすり寝られる……」


 つ、疲れた……。これ以上はもう起きれない。

 マグマに浸かって眼を閉じる。……ああ、地脈からの魔素が五臓六腑に染みるぜ。


「(ああ、気を抜いたら…一気に、眠気が……)


 俺は睡魔に身を任せて瞼を閉じた。この調子なら一週間は眠れそうだぜ。

 ああ、今日はいい夢見れそうだ……。


 こうして今日も俺は惰眠を貪る。

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