第16話 冒険者登録、からの?

執務室に着いたシキ達はブレージの正面のソファに座る。


秘書らしき男が茶を全員の前に置いて下がると、ブレージが話を切り出す。


「本題に入る前に少しいいかい?」

そう断ってからブレージは話を続ける。

「さっき、二人は何故闘っていたんだい?」

「それはじゃな──」


シキがそこまで言うと之布岐が遮って続ける。


「俺から言おう。俺達は森にいた時に組手をしたんだが、その時にシキに対して手も足も出なかった……。俺は弓を主に使うが、接近された時に何もできずにやられるのは嫌だから稽古をつけてもらっていた」


之布岐のその言葉に、成程そんな理由だったかと納得したシキは本題に移るよう促す。


「では、理由もわかったことじゃし、本題に入るとしようではないか」


そうは言ったが、シキは前世でファンタジー物の小説、所謂ライトノベルと呼ばれる物を多少読んでいた為、この後に何を言われるか大体の予想ができる。おおかた、ステータスを計る流れになり、シキ達のステータスに驚きつつもギルドに登録する、といったところか。


「そうだね。じゃあ本題に入るけど、3人とも冒険者になるって事でいいかい?」


ブレージの確認の言葉に頷くと、ブレージは秘書にハンドサインを送る。すると、秘書が台の上にカードの様な物を乗せて此方にやってくる。


秘書がシキ達の前にカードを一枚ずつ置くと、ブレージが言葉を続ける。


「そのカードが冒険者の証だよ。それには特殊な魔術が込められていてね。そのカードにマナを流してみて」


言われた通りにマナを込めてみると、何時ぞやのステータス画面に似たものが浮かび上がってきた。


─────────────────────────


名前:シキ

ランク:E

受注クエスト:無し


─────────────────────────


ステータスとかは表示されなかったな、と少し残念に思いつつももしやこのセカイでステータス等は一般的ではないのかと考える。

此方の反応で内容が見えたのを確認したのだろう、ブレージが話を続ける。


「それでそのカードに君達の情報が登録されたよ。さて、ここまでで質問はあるかい?」


ブレージに問われ、己のステータス表記と違うことが気になったが、恐らくシキ達とセカイの認識の差だろう。後ほど認識を多少変えねばな、と考えていた時だった。


シキの耳に忙しない足音が聞こえてきた。


足音が聞こえて直ぐに荒々しいノックの音が響く。ブレージが入るように促すと、ギルドの制服を纏った女性が開口一番に叫んだ。


大氾濫スタンピードです!」


「落ち着け、詳しく聞かせろ」


ブレージが話しかけて落ち着かせる。


女性のギルド職員が深呼吸して意を決して続ける。


「終わりの森から大量のモンスターがこの街に押し寄せて来ています。攻めてくるのはおよそ六百体程で特に魔獣が多く、危険度は最低でもC級、所々にA級の姿も見えるそうです」


「成程、分かった。君は冒険者達に通達を送っておいてくれ、私も直ぐに行こう」


女性職員が去った後、ブレージが口を開く。


「という事だ。手伝ってくれるかい?」


その言葉にシキ達は顔を見合わせてから頷く。


「良いじゃろう。ワシら任せるがよい」


ニヤリと笑ってみせるとブレージも同じく笑う。


「それは頼もしい。報酬は弾むよ。倒したモンスターはカードにポイントとして記録されるから存分にやってきてね」




ブレージに見送られてギルドの外に出て、外壁の上から街の外を眺めると、少し遠くにモンスターの固まりが見えた。


それを見ていたら、ハクノが唐突に提案してきた。


「ねぇ、競争しない?一番討伐数が少なかった人が今晩のご飯奢りって事で」


「上等、乗った」


「良いぞ、今のうちに飯代の用意をしておくんじゃな」


3人が不敵に笑う。その光景に周囲の冒険者は様々な反応をする。


組手を見ていた者は頼もしい仲間に安堵し、見ていなかった者は不安そうな顔をしたり、3人を侮る様な態度をとる。


そんな周囲の反応を他所に、3人はありったけのバフスキルを使い、準備を整える。


準備を終えたシキ達は互いに目配せをし、シキとハクノは外壁から飛び降り、之布岐は弓を構える。


こうして蹂躙は始まった。





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2ヶ月も空いて申し訳ありません。今後も多々遅れる事もありますが、ナハトラをよろしくお願いします。

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