第10話 とある冒険者
どうしてこうなった……?
俺達の目の前には15匹ものグレーハウンドが牙を剥いていた。
俺、クリストはB級冒険者である。
ギルドマスターからの依頼で終わりの森の調査に来た俺達のパーティーだが、道中でA級モンスターのグレーハウンドの群れに襲われたのだ。
一体ですらA級冒険者のパーティーが必要な相手が15体だ。この程度のモンスターはもっと森の奥に居る筈なのに。
既にタンク役のアーデルベルトが倒れ、白魔術師のオティーリエが必死に治療していて今戦えるのは剣士の俺と魔術剣士のミリアムしかいない。
その時だった。死を覚悟した俺の目の前にいたグレーハウンドの首が跳び、その首が地面に落ちるまでに更に三体のグレーハウンドが首を跳ねられた。パチリ、と剣を収める音がしてそちらを見ると、白い髪をたなびかせた目も眩むような美少女が極東の島国の剣士が持つとされる「カタナ」と呼ばれる武器を持って立っていた。
少女をよく見ると魔術士が被るような三角帽子から髪と同色の狐耳が飛び出し、服装も見たことも無い模様が所々にあしらっているドレスの様な服装で近接戦闘には不向きだと思われる恰好をしていた。
少女は鈴が鳴るような声で俺に話しかけながら赤い液体が入った瓶を投げ渡す。
「これを怪我人に振りかけよ。毒ではない、安心せい」
少女に渡された赤い液体を瀕死のアーデルベルトにかけると目に見える早さで傷が塞がっていった。その様子を飛びかかってきたグレーハウンドを片手間に斬り飛ばしていた少女は満足そうに見てから本格的に戦闘、否蹂躙を始めた。
そして何処からか飛んでくる矢がグレーハウンドを射貫くのも手伝って直ぐに15体もいたグレーハウンドは全滅した。
そして少女が納刀して少しすると近くの茂みから紫髪のこれまた美少女と円筒型の何かを被り弓を背負った男が現れた。狐耳の少女と会話しているのを見るに恐らく仲間だろう。
得体の知れない男を警戒しつつ少女達に礼を言う。
「ありがとう。君達が来なければアーデルベルトだけでなく俺達までグレーハウンドに殺されていた。礼と言っては何だが俺達に出来る事があればなんでも言ってくれ」
「ん?今何でも──へぶぅっ!」
「やめい。こほん……ならばワシらを近くの街の冒険者ギルドに案内せい。」
身を乗り出す紫髪の少女に手刀を振り下ろし見た目にそぐわない年寄り口調で要求する狐耳の少女に思わず聞き返す。
「それだけでいいのか?」
「ならお主らが払いたいと思う額の金を貰おうかの。ワシらはこの世界の相場を知らぬ故今なら多少安くても構わぬ」
そう言われたが命を助けられた身で恥知らずな真似はできない。
俺は他のパーティーメンバーを呼び寄せ、相談するのだった。
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