第9話 旅に出よう
朝になり、朝食を済ませた3人は今後の事について話し合っていた。
「やはり女神様の『お願い』もある故ずっと此処でスローライフという訳にも行かぬのう」
「同感。ボクも外の世界の食べ物に興味あるし」
「そうじゃな。之布岐はどうじゃ?」
「異論は無い。俺もこの世界を見てまわりたい」
「ならば決定じゃな。善は急げじゃ、用意するとしようかの」
決まれば後は早かった。3人は旅の準備を整え外に出る。シキは全員用意が出来ていることを確認するとマイルームを収納する。
そしてシキの先導の元、最寄りの街に向かって歩き始めた。
────
「──以上が最近の死の森の異変についての報告です」
「そうか……大事にならなければよいのだがな……」
とある街の冒険者ギルドの執務室で耳が尖った青年が眼鏡をかけた神経質そうな男から報告を受けていた。
青年、否、冒険者ギルドアーシライア支部ギルドマスターのブレージ・クロップは最近死の森と呼ばれる森の異変を思い出す。
妙に静かなのだ。それだけなら良いのだが、調査に行った冒険者からの報告からは「まるで何かから身を隠すようだ」とあった。そこから導き出される考えは、森に絶対的な強者が居るということになる。
目の前の男も同じ考えな様で、何時も不機嫌そうにしている顔をさらに歪めていた。
「……Bランクの冒険者を再度調査に向かわせろ」
「はっ」
男が頭を下げて出ていくのを見送ると、ブレージは溜息を吐いて独りごちる。
「何事もなけば良いのだが、万が一もある……か……忙しくなるな……」
────
森の中、シキ達はお世辞にも道と言えない道を歩いていた。
「ねぇ〜まだ着かないの〜?もう1時間は歩いたよ?」
「焦るでない、もう少しで道に出る筈じゃ……多分……」
「はぁ〜貴族の人が魔物かなんかに襲われて大声でもあげないかなぁ〜」
「そんな都合よくラノベ展開が起こるか」
「いや、わからんぞ?散々テンプレを踏襲してきた女神様の事じゃ、有り得ない話ではないぞ」
他愛ない話しで盛り上がっていたとき、3人の耳に叫び声が聞こえてきた。
「ほれ、言った通りじゃろ?」
「ここまでテンプレだと逆に怪しいよね……」
「だがとりあえず行ってみた方がいいかもな」
「そうじゃな、行ってみるか。お主ら、戦闘になるかも知れぬ故用意はするように」
「はーい」
「わかった」
ハクノと之布岐の反応を確認してから一気に駆け出す。
声がした場所に駆けつけると、15匹程の大きな灰色の狼が冒険者のパーティーらしき集団を襲っていた。
その光景を目にしたシキは手招きしハクノと之布岐を呼ぶ。
「ワシが斬り込む。之布岐が援護でハクノは之布岐の護衛と周囲の索敵を頼む」
「うん」「あぁ」
そうしてシキは狼に向かって突撃していった。
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