第5話 転生二日目の朝
朝になり目を覚ましたシキは、隣の布団で寝ていたハクノを揺すって起こす。
「ほれ、ハクノや、起きんか」
「ううん……あと5分……」
なかなか起きないハクノにため息を吐き、最後の手段をとる。
「すぐに起きねば朝食を抜くぞ」
「うぇ!?起きる!すぐ起きるから抜かないで!」
「全く……昨日から思ってたが前世と比べて食い意地が張っておらんか?こやつ……」
朝食を抜くと脅した直後に飛び起きたハクノに呆れるシキ。
「さぁ!起きたから早速ご飯だ!」
「まだじゃ。先ずは身だしなみを整えてからじゃ」
「えー」
「文句を言うな……ほれ、こっちに寄れ」
櫛を持ってハクノに手招きする。
近寄ってきたハクノに後ろを向かせ、髪に櫛を通す。
「にゃぁぁぁぁ」
気持ち良さそうな声をあげるハクノに笑みを浮かべつつもその手は淀みなく髪をといてゆく。
最後に薄紫の髪を昨日様な形に整え、後ろで結う。
「ほれ、完成じゃ。鏡見るか?」
「うわぁ〜……」
鏡に映る自分を見て感嘆の声をあげるハクノ。
「凄いよ!器用だね!シキさん、ありがとう!」
「ふふ……ありがとうな。さてワシは自分の髪と尻尾を整える故、着替えておれ」
「うん!」
自分の髪をとき始めたシキを横目に着替えるハクノ。
ハクノが着替え終わると、シキも髪をとき終えた様で、尻尾を抱えると丁寧にブラッシングしていく。しばらくして尻尾のブラッシングが終わり、立ち上がろうとした時、ハクノがおずおずと話しかけてきた。
「シキさん……」
「なんじゃ?」
「その……尻尾……触らせてくれない……?」
「ふむ……別に良いが……少しじゃからな?あと優しくの」
「うん……」
ハクノにモフモフの尻尾を向けるとハクノがそっと尻尾に手を触れる。
「んっ」
思わず声が出てしまったがハクノは構わず触り続ける。
「んっ……あっ……」
もふもふもふ
「んっ…………んん…………んあっ…………あ……ん……!」
わさわさわさ
「ひゃっ…………ハァハァ…………う……ひゃうんっ!」
くりゅくりゅ
「んんぁぁぁーー!ま、待て、ちょっと…ううんっ!」
「五月蝿いぞ、何をし──」
突如、
「わ、悪い……邪魔したな……」
「ち、違うの!これは……その……」
「ハクノぉ……激しすぎじゃあ……腰が抜けてしもうた……」
「ご、ごゆっくり……」
「待って!違うの!誤解なの!」
之布岐が去った部屋でハクノの虚しい叫びとシキの呼吸が響いた。
之布岐はシキの部屋から遠ざかり、先程の光景を思い出す。
顔を赤く染め、あられもない姿で息を荒くするシキはまだ若い之布岐には刺激が強すぎた様で、若干前屈みになりながら自分に与えられた部屋に戻り、シキの痴態を忘れようとするも努力も虚しく、しばらくはシキに会う度に顔を赤くする之布岐であった。
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