543 終わらせようか
「そ、そんな、嘘だ。そんなはずがない!」
裏切り者の少女が怒り、叫んでいる。
俺の言葉が信じられない? 信じたくないだけだろ。
怒っているのは認めたくないから――否定したいから、か。
「えーっと、別に信じて貰おうと思っているワケじゃあないです。疑うならご自由に」
俺は別にこの裏切り者の少女に信じて欲しいワケじゃあない。必要な情報も手に入ったし、もうどうでも良い。ただ、事実を伝えたかっただけだ。
まぁ、俺の自己満足だな。
裏切り者の少女は驚いた顔のまま魔人族のプロキオンを見る。
魔人族のプロキオンは少女の愚行を嘲るように、顔を歪ませ肩を竦めている。悪い顔をしているなぁ。
……。
「えーっと、後はプロキオンに任せます」
「ええ。任されました、よ」
もう後は任せよう。
プロキオンは、この少女と同じ魔人族だ。そして身内なのだろう。
だから、任せよう。
……。
「嘘、嘘、嘘だ。だってそれなら、私のしたことは……嘘だ!」
裏切り者の少女が叫んでいる。
俺はその声を聞きながら、部屋の外に出る。
身内であるプロキオンがこの少女をどうするか分からない。考えたくも無い。
はぁ。
俺の後を追うように芋虫もやって来る。
芋虫はもきゅもきゅと鳴いている。
はいはい、何が言いたいか分らないよ。
「えーっと、猫人の料理人さんは大陸の種族と異世界人に捕まっているようですね」
とりあえず芋虫に話しかける。
もきゅもきゅ。
芋虫は、多分、ホッとしたような顔で、もきゅもきゅと鳴いている。心配だった猫人の料理人さんの居場所が分かってホッとしているのだろう。
……。
裏切り者の少女のことは……考えないようにしよう。どう処理をするかは分からないが、プロキオンたちなら後味の悪いことはしないはずだ。そのはずだ。俺は、そう思うだけだ。
さて、と。
「えーっと、猫人の料理人さんを助けに行く予定ですけど、一緒に行きますか?」
もきゅもきゅ、と芋虫が力強く頭を上下に揺らしている。頷いているつもりなのだろう。
……。
芋虫も一緒に来てくれるようだ。まぁ、そりゃそうか。だけどさ、それならさ、芋虫の状態ではなく、少女の姿に戻って欲しいんだけどなぁ。そっちじゃないと、この芋虫、喋ることも出来ないみたいだしさ。
この芋虫はさ、どういう状況で、どういう条件であの姿に変わるんだろうか。それとも好きな時に変身が出来るのか? それだと、本当に都合が悪い時に芋虫に戻って、もきゅもきゅと鳴いて誤魔化していることになるよなぁ。
……。
いや、というか、だ。
俺がこの芋虫と初めて会ったのは、はじまりの町だよな? あそこで、こいつは芋虫の姿のまま組合に居た。
辺境だからっていうのもあるのかもしれないけどさ、あそこで普通に受け入れられていたよな? 多分、蟲人だと思われていたんだろうけど、敵対せず受け入れられたのは、そこはまぁ、辺境だからな。あー、でも、それだと天人族の里で戦った時はどうなんだ? あそこに居たのは大陸の種族ばかりだったよな? 大陸の種族の連中が四種族である蟲人(蟲人だという誤解だけど)を受け入れるとは思えないんだよなぁ。あの時はテイムした魔物だとか思われていたのか。
うーん。
分からない。
というか、どうやって意思疎通をしていたんだ?
辺境ではセンパイとか呼ばれて妙に慕われていたよな?
うーん。
分からないことばかりだ。
いや、まぁ、この芋虫に聞けば分かるんだろうけど、芋虫の姿だと、もきゅもきゅとしか言わないだろうし、少女の姿になった時は、他に優先して聞くことがあるから、そういう好奇心は後回しになるし、うーん。
いや、ホント、常に人型になって喋れるようになってくれないかなぁ。
ホント、不便だ。
……。
「とりあえず、自分は休みます。ずーっと働き詰めで疲れました。後のことは起きてからにします」
俺はもきゅもきゅと鳴いている芋虫を置いて自室に戻り、ベッドに寝転がる。
さて、と。
これからどうするか、だよな。
どうするかというか、やることは決まっている。
猫人の料理人さんを助けに行く。
それは決まっている。
だが、それだけじゃあない。
……。
そろそろ動くべきだろうな。
まだ動かせていないゴーレムとかもあるけど、動かすための魔石を探している場合じゃあないからな。それに今の数でも充分だろう。
……。
やること。
それは――敵の本拠地をぶっ叩く。
喧嘩を売ってきたのは向こうだ。猫人の料理人さんもそこだろう。
異世界人も、その異世界人をたぶらかしている王女だか、姫だかも、神を名乗る輩も、そこに居るだろう。
芋虫が協力してくれるのは心強いし、今の俺には必殺の一撃がある。
なんとか……なる。
なんとか出来る……はずだ。
一気に攻め込んで、親玉を倒し、この馬鹿らしい戦いを終わらせよう。
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