461 これも遺産か
さて、どうするかなぁ。
このピンクの壁の向こう側が大陸の種族の陣地なんだよな? テントもあるし、まぁ、間違いないだろうな。
で、だ。
問題はこのピンクの壁なんだよな。下手に触れると、さっきみたいに犬頭とか大陸の種族がやってくるかもしれないからなぁ。震動とかが警報みたいな感じで中に伝わるんだろうか?
このピンクの壁をどうやって通り抜けたら良いかも分からないしなぁ。さっき、突っ込んだ時は跳ね返された。歩いていたら大丈夫、なんてことはないだろう。というか、そもそも、このピンクの壁は人種の遺産だろうしな。どんな能力なのか、どんな力を秘めているのか――警戒した方がいい。
まぁ、とにかく下手なことはしない方がいいだろう。
となると、どうするか、なんだけどさ。
このピンクの壁沿いに北に向かう、か。まぁ、それしかないだろうなぁ。
俺はとりあえず、吹っ飛ばされないようにバランスを取りながら、壁沿いに歩いて行く。もうすぐ天人族の里に到着するだろうから、ここで焦る必要は無い。確実に行こう。
俺はピンクの壁を目印に吹雪の中を進む。
びゅうびゅうと風と氷が荒れ狂い、うっすらとしかピンクの壁が見えないほど視界が悪い吹雪の中を進む。
にしてもさぁ、大陸の種族は、この吹雪の中を進んだのか? こんな吹雪の中を? いつ止むか分からないような常に吹雪いている中を? 何千、何万人の行軍だろ? それがこんな視界が悪く殆ど見えないような、さらに氷の刃が舞っているような中を進むのか? 進めるのか?
いやいや、普通に考えたら無理だろ。
だから、人種の遺産に頼ったんだろうし、その力が活用出来るまで攻め込むことが出来なかったんだろう……ということは分かる。
このピンクの壁の中は吹雪いていない。吹雪から守られているようだ。結界みたいな人種の遺産なんだろうな。でもさ、それを使ったとして、どうやって移動するんだ? 移動型の結界なのかな?
そうだとしても、だ。何千、何万人と一緒に行動が出来るレベルなのか? ま、まぁ、人種の遺産ってさ、あり得ないような、常識からは考えられないレベルのシロモノばかりだから、出来てもおかしくはないけどさぁ。
でもなぁ。
それに、これ、いつまで保つんだ? 耐久力とか、持続時間とか無いのかな。なんの対価も無しに、無限に発動し続けるのか? 良く分からないけど、俺が気絶してから目覚めるまでの日数を考えると、これ、多分、一、二週間以上は発動し続けている――していた計算になるよな?
うーむ。
行軍方法が気になるなぁ。もしかすると、ここにある人種の遺産は一個だけじゃあないのかも。その可能性が高そうだなぁ。
人種の遺産!
また異世界人か。あの弓持ちほどの厄介な能力を持った異世界人は、さすがにもう居ないだろうけど、それでも一人が一つは人種の遺産を持っているからなぁ。それだけで厄介だ。しかも、追い詰めたら危険な肉の塊になるからな。アレを倒せるのは今のところ、赤髪のアダーラと俺だけだ。
異世界人なぁ。
あの学院都市に居た連中だろうか。それとも、それとは別の異世界人か? 学院都市に居た連中は子どもばかりだった。子どもが従軍して、戦争をするのか? 戦うのか? うーむ。この世界の連中に良いように使われているとしか思えないなぁ。子どもが? ま、まぁ、俺みたいな小さな女の子の姿の奴が言うことじゃあないのかもしれないけどさ。
俺はそんなことを考えながら吹雪の中を進む。
と、突然、視界が開けた。
へ?
え?
俺は思わず空を見る。青い空が広がっている。
周囲を見る。
吹雪が消えている。
吹雪が止んだ?
一瞬にして吹雪が消えたぞ。吹雪地帯を抜けたとかそういう感じじゃあない、消えた。まさに消えた、だ。
どういうことだ?
あ?
それにあわせたかのようにピンクの壁も消える。
俺はとっさに身を伏せ、雪の中に隠れる。
俺はその状態で獣耳を立て、耳を澄ます。声が聞こえる。
「敵の装置は破壊した! これで吹雪に悩まされることは無い! 全軍、突撃!」
偉そうな声音のそんな号令とともに、わあああぁぁと大きな歓声が巻き起こる。
装置の破壊?
吹雪?
突撃?
吹雪は天人族の里を守るものなんだよな? それが消えた?
……。
ヤバい!
不味いぞ!
突撃するくらい目と鼻の先に里があるってことだよな?
俺は雪の中から飛び上がる。
隠れて進むとか、そんなことをしている場合じゃあ無い。無いぞ!
俺は雪の上を滑り、その反発で一気に飛び出す。加速する。
このまま一気に天人族の里まで突っ込もう。いくら、みんなが強いって言っても何があるか分からない。
見つかっても構わない。
急ぐぞ!
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