254 結論は?

 自分が作ったゴーレム用の鉄の矢を鑑定した時に表示された結果は……。



 名前:失敗作

 品質:最低位

 失敗作。


 これだった。今回はさぁ、銅じゃあなくて鉄を使ったんだから、もう少し説明文に違いがあっても良いと思うのにさぁ。説明文さん、手抜き過ぎじゃあないか。


 んで、だ。



 名前:鋭く大きな鉄の矢

 品質:中品位

 鉄で作られた大弓用の矢。その羽根は鋭さを増す。


 これが機人の女王が作った鉄の矢の鑑定結果だ。こちらは普通に矢として認識されているんだよなぁ。んで、これ、大弓用ってなっているけどさ、ゴーレムの弓は大弓どころか巨大弓だよな? それでも大弓の範疇なのか。もしかすると、弓のカテゴリーはある程度以上の大きさは全て大弓扱いなのかもしれないな。


 さてさて、ここからが重要だ。俺は失敗作と表示された自作の矢を見る。多分、自作して物として認識されないレベルの物は全て失敗作という表記になるのだろう。今日、俺が作った矢は全て失敗作で統一されていたから、間違いないだろう。まるでゲームみたいな仕様だよな。これ、何も知らずに俺の元いた世界の人たちが見たらゲームの世界に迷い込んだって思いそうだよなぁ。イケニエさんたちがどの次元? 世界? から来たのか分からないが、俺の元いた世界と似たような世界から来ていたらゲーム世界だと勘違いしているかもしれないな。


 あー、連中に会いに行くのはどのタイミングが良いのかなぁ。まずは力をつけて、拠点を充実させて、と考えていたけど、何処までのラインまで頑張るかって決めていなかったなぁ。


 ……。


 まぁ、そこは気分で良いか。そうだな。今までも気分で行動していたんだ。無理に変える必要はない。焦る必要はないが、ゆっくりしない程度に頑張ろう。と、話が逸れたな。


 矢だよ、矢。


 矢の話だった。この鑑定結果を見て思ったことがあるんだよな。これは鑑定結果が矢として認識されて表示されるように頑張るというのとは別のことだ。いや、結果的には近づくのか?


 とにかく、だ。それは、まぁ、何処までが失敗作なんだってことだ。


 さて、一つの実験をしてみよう。


 俺が作った失敗作と表示される『矢のような物』を分解する。分解した鉄の棒や矢尻、天人族の羽根はなんと表示されるのだろうか。気になるよな。


 タブレットをかざし鑑定してみる。


 結果は……。



 名前:ガラクタ

 品質:低品位

 用途のないゴミ。


 ゴミと来たか、ゴミと。天人族の羽根なんかは普通に鑑定出来てもおかしくないのに、ガラクタ扱いだ。鉄のシャフトや矢尻なんて、鉄の塊として鑑定結果が出てもおかしくないのにガラクタ扱いって、どういうことなんだ? ちょっと納得が出来ない。


 じゃあ、次の実験だ。


 ガラクタと表示された鉄の矢尻を魔力で変化させる。こねこねと、な。これで、ほぼ元の状態と同じ鉄の塊だ。


 さあ、これの鑑定結果はどうだろう。



 名前:粗悪な鉄の塊

 品質:低品位

 鉄の塊。粗悪品。


 お? 一応、鉄の塊に戻るのか。ただ、粗悪品になってしまっているな。しかし、うーん、製品でもないのに粗悪なのか。これ、単純に、こういう場合はこういう形容詞がつきますって法則に従っているだけなのかもしれないなぁ。この鑑定という力は単純に決められた法則から名前や文章を出しているのかもしれない。


 では、次の実験だ。


 鉄のシャフトを魔力を使わず自身の怪力だけで塊に変えていく。鉄の棒を鉄の塊に作り変えることが出来るほどの怪力って……我ながら凄いよなぁ。まったく凄い怪力だ。


 よし、これはこれで見た目的には元の鉄の塊と変わらないぞ。これの鑑定結果はどうだろうか。


 ……。



 名前:ガラクタ

 品質:低品位

 用途のないゴミ。


 どう見ても、何処からどう見ても鉄の塊にしか見えないのにガラクタ扱いだ。うーん、これは魔力を介するか介さないかで変わっているのか? いや、矢尻とシャフトで結果が変わっている可能性もあるか。


 残りの失敗作で実験してみよう。


 ……。


 そして、実験して分かったことは……最初に考えたとおり、魔力で変化させるかどうかが重要だった。どう見ても、何処からどう見ても鉄の塊にしか見えない状態にしても魔力を使わなければガラクタから変わることはなかった。


 結論――良く分からない。


 多分、魔素とやらが重要なのだろう。この世界は全て魔素から創られていて魔力の源になるものだから、それが重要なのだろう。この世界の法則ってヤツなのだろう。


 と、まぁ、それが分かっても、何故、俺が作った矢が失敗作扱いになるかは……分からないんだよな。


 うーん。


 まぁ、最初の話に戻るけど、数をこなすしかないか。そのうちに何とかなるだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る