244 魔法掌握
いつもの日課をこなす。
草魔法で小麦を成長させ、刈り取り、またそこから種を作る。自身の魔力育成を兼ねた流れ作業だ。
……それなりに魔力が成長している実感はある。
そろそろ蟲人のウェイがやっていたように、この世界のシステムを使わずに魔法を発動させる練習を始めた方が良いかもしれない。
――[サモンヴァイン]――
草が生える。これが世界のシステムを使って発動させた場合だ。今まで、魔法はこうやってシステムから発動させていた。これを、内なる魔力を使い、漂っている魔素を無理矢理変換させて、先ほどのシステムを介した現象と同じように創り変えていく。
決められた結果が発動するオート操作から、揺らぎのあるマニュアル操作へ。どちらにもメリットデメリットがあるので、単純にマニュアルの方が上とは言いづらいが、出来るようになった方が良いだろう。
今まで通りのオートでの魔法発動は、発動させてしまえば同じ威力、同じ効果、安定した性能が望める。マニュアルでの魔法発動は俺の調整次第で効果が変化する。上手く発動させることが出来る時もあれば、ちょっとした気の緩みで変な発動の仕方をしたり、思ってもないような効果が起こる可能性だってある。
マニュアルでも好きな効果が発動、効果の予想が出来るようになるまでは、オートと併用かマニュアル操作で発動出来た気に入った効果をオート化させて、新しい魔法として使うか……そういった感じでやってみよう。
うん、新しい魔法を作るって感じだな。
これが出来るようになればレベルアップやそれによって取得したBPの振り分けなどを無視出来るようになる。タブレットという補助輪を外せるな。
漂っている魔素を魔力で掴み、魔力を流し込み、草になるよう形を創り変えていく。
……。
しばらく作業を続ける。
こねこね。
そして、緑色のぐにゃぐにゃとした寒天のようなものが完成した。見ようによっては葉っぱが生えているように見える寒天もどきだ。
……。
草には……見えないよなぁ。緑色だけど、緑色だけども!
う、うーん。まぁ、要練習ということで。
にしても、こうやってマニュアル操作の難しさを理解すると、オート操作の魔法発動の便利さが実感出来るなぁ。世界のシステムに組み込まれているって感じだから、凄いよな。これを考えた、創ったのは誰なんだろうか。それこそ、神とか、この世界の創造に携わったような人物なのだろうか。
神、か。
ここって神がいてもおかしくないような世界だからな。
「む。何者かが近づいてくるのじゃ」
小麦の収穫を行っていた機人の女王が手を止め、俺の方へ振り返る。
何者かが?
「まーう」
現れたのは羽猫……ではないな。
その後ろに翼の生えた人が十人ほど立っていた。羽猫が連れてきたワケではないだろう。このクソ羽猫は紛らわしいことをするなぁ。
「この偽りの種族の子どもがそうなのか?」
「伝承にあった機人の姿も見える。間違いないだろう」
現れたのは天人族だ。アヴィオール以外の天人族は初めて見るな。どいつもこいつも背中に天使のような翼を生やし、整った中性的な容姿をしている。美形ばかりでうんざりするな。
もしかすると、竜の姿が本体で、この人型は偽りなのかもしれない。だから、容姿を好き放題――美形に変化させているとか。ありえそうだな。
「えーっと、何の用ですか?」
天人族の長? のアヴィオールは俺と他の天人族が接触しないようにしていた。多分、命令して近寄らせないようにしていたのだろう。
で、こいつらは、それを無視してやって来たというワケだ。
命令を無視してやって来た理由。ろくなものじゃあないだろうな。
「何の用か、だと!」
「まて、落ち着け。すまないな、少し気が立っているのだ。帝に問いたいことがある」
アヴィオールと一緒で随分と偉そうだな。偉そうな態度を取るのは天人族の種族特性なのだろうか。
「はぁ、何を問いたいんですか?」
いきなりやって来て、なんというか。
「お前が帝なら、何故、偽りの種族どもをのさばらせている」
「その通りだ」
「我ら天人族を他の種族と同等に扱うなど!」
……。
なるほどなぁ。
不満があって、我慢出来なくなったから直接俺のところにやって来た、と。でもさ、それを言いに行くのが、アヴィオールのところではなく、俺のところというのが、な。もう、あれだ。
魔人族も獣人族もそうだったけど、トップは、プロキオンもアダーラも、まぁ、うん、性格に難はあっても実力が凄いのは分かるよ。だけど、配下がダメダメだったよなぁ。魔人族はプロキオンがトップじゃあなかったから仕方ないのかもしれないが、クソ生意気なクソガキさんがいたり、文明のレベルが低かったり、まぁ、問題山積みだ。獣人族も今でこそ俺に従ってくれているが、最初はアダーラの命令を無視して俺に襲いかかってきていたし……なんだろうなぁ。
トップの連中が自分の能力に頼りきりで下の者を掌握出来ていない感じだよなぁ。ただ、力で抑えているから、こういうことになるのかなぁ。
ため息が出そうだよ。
「えーっと、それでどうして欲しいんですか?」
……これは話し合いで解決出来ないかもしれないなぁ。
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