238 宇宙空間
とりあえずここに来た目的を済ませてしまおう。
開かない扉があるってことだったよな。まぁ、どう見ても目の前の隔壁がそうだよな。んで、操作してくださいと言わんばかりに隔壁の横に台座が置かれている。
これを操作すれば開くんじゃあないだろうか。
「えーっと、開かない扉というのはこれですか?」
隔壁のような扉を指差す。そして、赤髪のアダーラの方を見ると、何故か首を横に振っていた。
へ?
「姉さま、その扉は横にあるそれを操作すれば開きます。それよりも……実際に見て貰った方が早いと思います」
あ、はい。
心の中でアダーラは脳筋だからなぁ、と侮っていた部分があったかもしれない。あ、うん。普通は気付くよな。
赤髪のアダーラが台座に触れて操作する。お、タッチパネル的な感じなのか。
すると、その台座の上に映像が浮かび上がった。
お、おー、近未来的だ。
「姉さま、これは今の扉の中を映し出しているのです。部屋の奥に開いているここと同じような扉があるのが見えますか?」
浮かび上がっている映像を見ると、確かに開いている隔壁扉のようなものが見えた。その扉の先は真っ暗な闇に沈んでいる。
「あ、えーっと、はい。開いた扉がありますね」
「姉さま、見ていてください」
赤髪のアダーラが続けて操作すると映像が消えた。そして、何か大きなものが動いている気配がし、しばらく待つと目の前の隔壁が上へと開き始めた。
「えーっと、これって……この操作方法って、アダーラ、知っていたんですか?」
赤髪のアダーラは首を横に振る。
「試しました。最初は槍で壊せないか試していたのですが、傷一つ付かないので他の方法を考え、見つけました! この台座の操作も何度も何度も何度も! 試して、開く操作方法を見つけました!」
アダーラはアダーラだった。
いや、まぁ、試すってのは間違っていないと思うけどさ、でもさ、開くまで適当に操作するとかどうなんだ。罠とかあったらどうするつもりだったんだ?
なんというか、基本、力押しだよなぁ。
まぁ、でも、それで罠もなく開いたんだから結果オーライか。
かなり大きな隔壁扉を抜け、部屋の中に入る。
……何もないな。広い空間があるだけだ。なんというか、この神域は何処も広い。規模が大きい。もしかすると、この神域で暮らしていたのは巨人なのかもしれないなぁ。
で、この部屋の奥に開いた扉と、その先に暗闇があったんだよな。
って、あれ?
先ほど開いた隔壁があった場所を見る。
……閉じられている。
閉まってるじゃん。隔壁が降りている。
どういうことだ?
「えーっと、アダーラ?」
「姉さま、そうなのです。あの扉が開きません! この中には外のようなものがないのです」
外のようなもの? って、ああ、操作用の台座か。確かに無いな。何もない。
ん?
でも、外から中の映像を見ていた時は開いていたよな。
「えーっと、誰かが中に残って外で操作すれば良いのでは?」
まぁ、外の人は中には入れないだろうから、誰かが残ることになるだろうけど、それでいけるよな?
だが、赤髪のアダーラは首を横に振る。
「姉さま! それはすでに試したのです。外のあれは、中に生物がいると操作を受け付けなくなります。生きていないものを残した場合は操作できます!」
へ?
そうか、もう試したのか。
アダーラ、意外に有能だなぁ。
って、ん?
生物が残っていると操作できない。無機物なら操作できる?
開かない隔壁のような扉の先は暗闇に包まれている。
ん、んん?
生物が部屋に居る状態で扉が開くと危険だから、開かないのでは? 安全装置が働いているのでは?
扉の先に広がる闇。
神域。
この神域は何処にある?
俺はあの隠された塔から、遙か彼方の空へと飛び放たれ、この神域へと転送された。
ここは何処にある?
宇宙、か。
多分、この星……星だよな? の衛星として神域があるんだよな?
暗闇。
あ……。
「アダーラ、この先は進んだら駄目な場所です。死の世界です」
宇宙空間じゃないか!
隔壁らしい扉って、隔壁そのものじゃねえか!
なんで、こんな場所に常時開いているような感じであるんだよ!
「そうなのですね。姉さま! 分かりました!」
開かなくて良かったよ。開いていたら、死んでいたぞ。あー、でも、この世界の人たちって厳密には人じゃあないから、魔素生命体だったか? だから、意外と宇宙空間でも大丈夫な可能性もあるのか? いや、でも、危ない橋を渡るべきじゃあない。
にしても、外――宇宙空間への入り口がこんなところにあるとか……。
無機物を置いた場合は宇宙への隔壁を開くことが出来るようだから、ゴミ捨て場か何かだったのかなぁ。
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