161 その他
「ええ。分かっています。やることとは里の者たちの皆殺しです、ね」
プロキオンが急に何かそんなことを言い出した。
……。
えーっと、はぁ!? だな。
プロキオンは何を言っているのだろうか。この里の連中ってプロキオンの同族だよな。
「えーっと、なんで、そんな話になっているのだろうか」
「ええ。先ほどの話でそうなっていると思ったのです」
何故かプロキオンが得意気だ。
……。
「えーっと、なってないと思うけど……やめようね」
割とドン引きだ。
まぁ、でもさ、今は配下みたいになってくれてこちらの話を聞いてくれるけどさ、プロキオンってこういうヤツだよな。この里に来た時に里の魔人の腕を吹き飛ばすとかしているからなぁ。人と敵対しているし、どう考えても善良な善人ではないよ、な、うん。
……。
は!
気付いてしまった。
も、もしかして、これ、アレか。これは、アレか。俺は魔王ルートにでも入ってしまったのか。ルートって言い方が相変わらずゲーム的だけど、まぁ、俺はゲームが好きだったから、どうしても考え方の下地にゲームがくるのは仕方ない。
ひっひっひとか悪そうに笑う蟲人に同族でも抹殺しようとする魔人。どう考えても正義の味方側じゃあないよな。悪の軍団って感じだよ。帝のことを知って、魔王ぽいなって思ったことがあるけど、まさにそうなんじゃあないか。
って、ことはその後を継いでいる俺は魔王なのか。う、うーん。このままだと本当に人と敵対する感じになりそうだなぁ。
「ひっひっひっひ、終わりましたぞ」
蟻頭が戻って来る。意外と早かったな。
「あ、えーっと、了解。戻ってきたならちょうど良いか。えーっと、やることって言うのはワイバーン種の討伐だ」
「なるほど。それなら私は一撃で倒しましょう」
何がなるほどか分からないが、プロキオンなら一撃だろうな。
「ひっひっひ、それなら我は数をこなしましょう」
いやまぁ、うん、余裕だろうね。
はぁ、でもなぁ、そうじゃあない。
「いや、えーっと、これは自分一人でやることなので手を出さないで欲しい」
そうなんだよな、自分の力で行わないとミルファクは認めてくれないだろう。あー、そうだ、ミルファクのところにも顔を出さないとなぁ。せっかく作ってくれた大盾がボロボロだ。俺が隠れられるほどの大きさだった大盾が今は手の部分を隠す程度の小盾みたいになっているからな。まぁ、それをやったのは俺の目の前に控えている蟻頭だけどさ。
「と、その前に盾の修理のため、森に向かう。あー、えーっと、里の連中も生きている……生きているんだよな? と少し話をしてから向かう」
「帝よ、ひっひっひ、我の真の名前はウェイ。蟲人の中でも魔導を司る者たちの長をしております」
……。
目の前の蟻頭が突然、そんなことを言い出した。なんで急に名前を名乗りだしたんだ?
「ひっひっひ、そこの空断が邪魔だからね、名乗る間を考えていたんだがね、どうにも離れそうに無い。帝を待たせるのも悪いと思ったのさ」
あ、はい。
「えーっと、よろしくお願いします。自分は……」
「帝よ。この者に名前を教える必要はありません」
プロキオンが何故か得意気な様子でそんなことを言っている。
ん?
あー、そうか、プロキオンには名乗っているからな。自分だけ知っているって優越感かなぁ。
「自分はタマです」
プロキオンが驚いた顔で俺を見ている。まぁ、アレだ。多分だけど、今までの流れから自分の本名を伝えるのは不味いのかもしれない。不味いというか、特別な意味があるんだろうな。となると、この世界での仮名を名乗るのが良いだろう。それなら、いくら名乗っても減らないしね。いやまぁ、本名でも減るとは思っていないけどさ。
「タマ帝……ひっひっひ、了解だよ」
蟻頭――ウェイが膝を付き、頭を下げる。ちょっと嬉しそうな感じがする。うーん。
「えーっと、里の人たちは無事らしいけど、何処だろうか」
「ええ。帝よ、いくら、この里の者たちでもこの程度で何とかなるような者たちは居ません」
プロキオンが挑戦的な目でウェイを見ている。
「ひっひっひ、それは我の制限解除後の姿を見ていないから言えることだね」
ウェイはそんなことを言っている。何だよ、制限解除って、アレか、まだ変身を残しているとか、そういう感じのか? ホント、何だよ、コイツら。
「帝よ。帝自身が先ほど言われていましたが、ですが、その行為、里の者たちに何か伝える……それは不要です、ね。この程度で捕まってしまう弱さが悪いのですから、ね。帝が声をかければ恥が増えてしまうでしょう」
う、うーん。本当にそうか? まぁ、でも同族のプロキオンが言うのならばそうなのか、なぁ。プロキオンと里の魔人を同族でくくってしまうのはどうかと思うけどさ。まぁ、プロキオンも早く魔石を何とかしたいだろうし、そっちを優先するか。
「あー、えーっと、分かりました。では先に森に行きます。その後、すぐにワイバーン種の討伐に向かいます」
じゃあ、まずはミルファクだな。
ミルファクの住んでいる作業場を目指し三人で森に入る。
「えーっと、そういえば四種族って言っていたけど、魔人、蟲人、それ以外の二つは何でしょう?」
走りながら聞いてみる。
「獣人と天人です、ね」
プロキオンが教えてくれる。獣人に天人、か。
「えーっと、獣人って街で働いていた猫人みたいな感じですか?」
「あれら人もどきと同じにしては獣人が可哀想でしょう」
プロキオンは全然かわいそうだと思っていない感じでそんなことを言っている。むしろ、何処か楽しそうだ。
「ひっひっひ、愛玩動物も種類が多いからね。獣人に似たのもいるだろうさ。しかし、空断もよく愛玩動物の中から、その魔石を見つけたものだねぇ」
「ええ。苦労しましたよ。禁忌……イケニエにも会いましたし、ね」
イケニエ? あー、何か、そんな話を聞いたような覚えがあるな。
「ひっひっひ、それは大変だったねぇ。どうだったい?」
「ええ。秘めているものは大きいと感じましたよ。まぁ、まだまだ私の敵ではありませんが、ね」
何だろうなぁ。
コイツら、ホント、さ。コイツらの会話ってさ、魔王の幹部とか四天王って感じなんだよなぁ。
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