152 増える
魔力を纏わせる、か。
もしかして……。
そう思い、俺はタブレットを見る。
……。
あった。
新しく表示が増えている。
魔力操作と魔力変換の二つ……多分、これがミルファクの言っている武具に魔力を纏わせるために必要な技能なのだろう。それは良い。だが……。
「しかし、さね。使えるようになるのはそれなりの修業が必要になるのさね」
ミルファクはそんなことを言っている。それなりの修業、か。
これさ、俺が、今、このタブレットを操作してパッと使えるようになったら……。
あー、そうだよな、そうしたら俺すげぇぇーって出来るよな。BPはこのために増えたかのように、ちょうど『2』ある。ホント、あつらえむきだ。ミルファクの驚愕する顔は見てみたい――だが、それは我慢する。
俺は振らないよ。こんな誰かがレールを敷いたかのような流れに乗ってたまるか、ってぇの。
それよりも、だ。
俺はタブレットを見る――見ている。
そこに表示されている項目。
レベル17
称号:神帝・エレメント火・ボアキラー・ノービス・ごっこ勇者
クラス:神帝
BP2
スキル:共通語3
共通語書読1
魔人語3
辺境語0
獣人語0
音感0
察知0
料理1
剣技0
槍技2
・二段突き2
・旋風槍0
斧技0
盾技0
火耐性2
魔力操作0
魔力変換0
魔法:草4
・サモンヴァイン3
・グロウ1
・シード1
・ロゼット1
時2
・タイム2
・ストップ1
火燐1
・スパーク1
……。
まぁ、レベルや称号、クラスは変わらない。だけどさ、だけどさぁ! 槍技が『2』に増えて新しく旋風槍なる技が増えている。いやいや、ちょっと前には表示されていなかったよな? 何で急に上昇したんだ? 何か解放条件みたいなのがあって、それが達成されたのか? それに、だ! 『料理1』って何だよ。これ、多分、このミルファクのためにずーっと料理をしていたから増えたスキルだよな。でも、なんで、このタイミングで表示されるようになったんだ? 魔力操作や魔力変換が表示されたから? 俺が認識したから増えたのか?
認識したから……増えた?
それなら、だ。俺は魔力というか、その流れが見えるようになったけど、それが、何故、スキルとして表示されていないんだ? 魔力を見るのはスキルじゃあないのか?
だったらスキルって何だよ。
というか、だ。料理スキルの意味が分からない。料理って一口に言っても焼き料理や煮物など様々な料理があるよな? これが増えたら、その全ての料理が上手くなるのか? まぁ、それを言い出したら剣技とか槍技が上昇することも意味が分からないんだけどさ。
……。
今更、か。
考えるだけ、頭を悩ませるだけ無駄か。ホント、このタブレットだけを見るとゲームみたいだ。今でも、少し、実はヴァーチャルでリアリティなゲームを遊んでいるじゃあないだろうかって錯覚を起こすことがある。獣人の美少女アバターを使っている気分だよな。
俺は頭を振る。いや、あの死の感覚は――あれは現実だ。
「ん、どうしたのさね」
「あ、えーっと、いや、何かコツがあるのかなと考えていたところです」
「魔力を見ることが第一段階さね。そして、その流れを操作できるように動かすことを考えるのがコツさね」
ミルファクが丁寧に教えてくれる。あー、うん。
俺はタブレットを操作する。
時魔法を『2』から『4』へ増やす。
増えた魔法はリターンとヴィジョンの二つだ。
ふーん。
リターンにヴィジョンねぇ。ヴィジョンって、もしかして未来が見えるようになる魔法かな。時魔法だしさ。でもさ、こういうのって常時発動というか、危機的状況になると勝手に発動するようなスキルじゃないと意味が無いってイメージがあるなぁ。いやまぁ、それはゲームだったら、そうだ、ってイメージだけどさ。
リターンは分からないなぁ。ゲームだとよくある拠点に戻る魔法って感じだけどさ。この世界だと、微妙にそういう定番を外してくるからなぁ。まぁ、もし拠点に戻る魔法だったとして、その拠点って何処だって話だよな。
……拠点?
俺は空を見る。
そこには何も無い。
時魔法を覚えた魔石があった場所。玉座。空に浮かぶ神域。十二体のゴーレム。
拠点。
まるで用意されていたかのような……。
BPがない今はリターンの魔法を習得出来ない。確認することは出来ない。だけど、そうなのか。あの神域を拠点として使えってことなのか。そこに戻るための魔法なのか。
何だろう、その予想が――考えが、凄く、しっくりと来た。
……。
まぁ、BPがないから、その辺のことは後回しだ。BPが増えたら確認しよう。
まずは魔力操作と魔力変換だな。何故、BPを振って習得しなかった、か……だな。いや、だってさ、ミルファクが教えてくれるって言っているのに、それを俺すげぇがしたいがためだけにポンッと習得するって、それは違うよなぁ。
……って、最初に考えていたことに戻っているじゃあないか。思考がぐるぐると回っているなぁ。
……。
って、俺は誰に言い訳をしているんだか。
まぁ、そこはゆっくりと、そしてしっかりと習っていこう。
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