142 うま味
寸胴鍋やドラム缶のようなものに海水を入れて草を生やしたらどうだろうか。
……。
って、無理かなぁ。
生み出した草がどれだけの海水を吸い込んで白い粉を作っているのか分からないが、寸胴鍋などだと生み出した瞬間に溶けてしまうのは一緒だろう。
連続で草を生み出せば何とかなるだろうか。
うーん、難しい気がする。
じゃあ、海水の量を減らすか?
どうだ?
うーん、フライパンに入れた程度の海水の量では白い粉が殆ど作られない気がするんだよなぁ。海水の量が必要だよな。
まぁ、でも、ものは試しか。
フライパンに海水を入れる。
――[サモンヴァイン]――
フライパンの中の海水を指定して草を生やす。生まれた草が白い粉をまき散らし、そして枯れる。白い粉はフライパンの中の海水に溶けて消える。
ん?
フライパンの中の海水の量は減ってなかった? 減ってなかったよな? 水位が殆ど変わっていなかったようにしか見えなかった。
んー。つまり、海水の中の何かの成分だけを取りだしている? となるとますます寸胴などに大量の海水を入れても無駄になるってことだよなぁ。
この白い粉がなんなのか。俺が考えているように塩なのか、どうなのか、これでは確認が出来ない。確認のしようが無い。
これが塩なら色々と捗るんだけどな。
……。
色々と試してみるか。トライアンドエラーは基本だよな。
フライパンではなく片手鍋に海水を入れる。こちらの方が量は入るからな。
そして、と。
――[サモンヴァイン]――
片手鍋の中の海水を指定して草を生やす。
ここだ!
――[グロウ]――
草を成長させようとする。
……。
だが、草が成長するよりも早く枯れてしまう。
うーん、駄目か。
そもそも、何故、枯れてしまうのだろうか。
――[サモンヴァイン]――
浜辺に草を生やす。その草を引き抜き、海水に放り投げてみる。
……。
海水に浸かった草が、その沈んでいく部分から枯れていく。この場合には白い粉をまき散らさなかった。
ん?
何だ? この反応。まるで海水が有毒みたいな反応だな。
次に森から枯れ枝を拾い、海に投げてみる。枯れ枝は海にぷかぷかと浮いている。草のような反応を起こすことはなかった。
ん?
んー。
どういうことだ?
草は自分が魔法で生み出したから、なのか? 自然に生まれたものは問題無し。魔法で生み出したものだと枯れる。そんな感じなのだろうか。これ、魔人族が浮かないことと関係が……いや、それはさすがにないか。
まぁ、でもさ、枯れるだけで消滅するワケじゃあないから、何か方法はあるはずだ。
――[サモンヴァイン]――
片手鍋に入った海水を指定して草を生やす。
――[シード]――
生えた草を種に変え……れないな。間に合わない。種に変わる前に枯れてしまう。
うーん、駄目か。
白い粉が何なのかを確認したいだけなんだけどなぁ。先に草を生やしてから海水に浸けても意味がないし、難しいなぁ。
片手鍋の中から枯れた草を取りだし、捨てる。そのうち、自然に還るだろう。というか魔法で生み出したものだから消えるんじゃあないかな。
後は……。
――[サモンヴァイン]――
片手鍋に入った海水を指定して草を生やす。
――[ロゼット]――
すぐに次の魔法を使う。草が花開くように葉を広げる。だが、その広げた葉っぱごと枯れてしまう。
駄目か。
って、ん?
広げた葉っぱが受け皿のようになって白い粉を受け止めている。
そして、葉っぱを広げた枯れ草は片手鍋の中に沈んだ。
これは、もしか……するのか?
タイミングとスピードが命だ。やってみよう。
――[サモンヴァイン]――
――[ロゼット]――
葉を広げた草が白い粉をまき散らし、枯れる。
ここだッ!
俺はその枯れ草を、広げた葉っぱで包み込むように片手鍋から持ち上げる。
ッ……。
枯れ草をゲットだ。
……。
枯れ草を広げる。枯れた葉っぱの上には白い粉が乗っていた。
出来たッ!
取れた!
『ロゼット』の魔法は使い道のないゴミみたいな魔法だと思っていた。だが、こんな活用方法があったなんて! って、何だか出来過ぎだな。まるで、このために用意されていた魔法かのようだ。
……。
いやいや、そんなワケがあるか。考えすぎだな。
ま、まぁ、とりあえず白い粉は手に入った。
舐めてみよう。
これが塩なら、かなり料理の幅が広がるぞ。
ぺろり。
……。
……。
……。
辛い。
塩辛い。
だが、ただ塩辛いだけではなく、旨みを感じる。風味があるというか、アレだ、化学調味料みたいな味。
正直、美味しい。
これ、凄く良いんじゃあないか。これを料理に使ったら……最高だよな。
うん、そうだよ!
よし、手に入れる方法は分かった。ガンガン作ろう。
捗るなぁ。
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