110 タイム
石。
石ころ。
玉座の上にある石。
魔人族のプロキオンは並んでいる巨大なゴーレムを見て、それを秘宝だと言っていた。だが、どう考えても、こちらの方が秘宝のような気がする。
でも、石だよなぁ。ただの石だ。石にしか見えない。拳ほどの大きさの石だ。
……。
そうだ。
鑑定だ。何か有用な情報が得られるかもしれない。こういう時のためのタブレットだよな。
石っころにタブレットをかざす。
……。
しばらく待つ。ホント、長く感じられる待ち時間だな。
……。
魔人族のプロキオンはゴーレムの方を調べているようだ。ゴーレムか。動かないし、ただの飾ってある大きな鎧にしか見えないな。ゴーレムって、つまりは動く機械人形だろう? 鎧の中は空っぽにしか見えない。動くための動力や機構が存在しているようには見えないんだよなぁ。それでどうやって動くんだ? 動かなければただの鎧だ。
……。
と、そろそろ鑑定が終わるな。
メーターが一周する。そして、鑑定結果が表示される。
名前:ティアの魔石
品質:神威
食べることで力を得られる。
……。
何だ、これ。
魔石? 魔石って、魔石だよな? あの魔獣の体内から見つかることがある石だよな? ここの名前が――この場所の名前がエスティア神域だったよな? エスティア、ティア、何か関係があるのか? いや、あるとしか思えないよな。ここの神は魔獣だった?
……分からないな。
それに品質の欄も神威なんて良く分からないものになっている。神の威光ってことか? 石が? この石が? 何処から見ても石だぞ? 別に特別な何かを感じない。神威って言うなら、もっとこう、神秘的というか、見ているだけで圧倒されるような何かがあっても良いんじゃあなかろうか。
そして、一番の謎は説明だ。食べる? 食べるって……食べるってコトだよな? この石ころを食べる? 拳くらいの大きさはある、この石を? 一気飲みするには辛い大きさだ。噛み砕くか? いや、でも、囓ったら、いくら今の丈夫な歯でも欠けそうだぞ。
う、うーん。
食べる。食べる、かぁ。
力を得られるって何の力だ? 神の力か? う、うーん。
説明を読んで思ったが、間違いなく、この石ころが秘宝だ。並んでいる大きな鎧なんかじゃあない。これが秘宝だ。
でも、だ。
どうなんだ? 食べて力を得る。
……そうだな。
「あ、えーっと……」
俺は魔人族のプロキオンを呼ぶ。
「帝よ、何でしょう」
鎧を調べていたプロキオンがこちらへと振り返る。秘宝を求めていたのは、このプロキオンだ。ならば、プロキオンに渡すのが一番じゃあないか。後の判断は任せよう。
「えーっと、この玉座に乗っている石が秘宝みたいですよ」
俺の言葉を聞いたプロキオンは首を傾げている。
「あ、えーっと……」
「帝よ、何のことを言っているのですか」
え?
……。
まさか、見えていないのか?
「えーっと、まさか、まさかですが、ここにある玉座や石って見えていますか?」
「見えないです、ね」
プロキオンは少し困ったような顔をしている。
見えていない。
俺は自分が持っているタブレットを見る。そして、もう一度、玉座を見る。
見えていない。
俺だけが見えている。タブレットや真の塔、その中にあった台座と同じだ。
……。
俺は玉座の上にある石ころを拾う。軽い。まるで何も持っていないかのようだ。
これは……何だ?
これは……。
俺は石ころを喰らう。
ゴクリ。
飲み込む。飲み込んだはずなのに、その感触がない。まるで体に吸収されたようにしか思えない。
自分の体が闇に包まれていくような感覚。黒い闇。力が湧き上がってくる。
……。
だが、それだけだ。
特に何も起こらない。本当にそれだけだ。俺はタブレットを見る。
レベル11
称号:神帝・エレメント火・ボアキラー・ノービス・ごっこ勇者
クラス:神帝
BP:3
スキル:共通語3
共通語書読1
魔人語3
辺境語0
獣人語0
音感0
察知0
剣技0
槍技1
・二段突き1
斧技0
盾技0
火耐性0
魔法:草4
・サモンヴァイン3
・グロウ1
・シード1
・ロゼット1
時0
称号に神帝が加わっている。それに合わせたかのようにクラスも神帝に変わっている。うーん。神帝なんていういかにもな名前と一緒に『ごっこ勇者』や『ノービス』が並んでいるのは、何というか、何というか……一気に飛び越えすぎたような、凄く微妙な感じだ。
BPが増えているのはティアの魔石を食べたからだろうか?
いや、まぁ、正直、その辺りはどうでも良い。よくはないが今はいい。
重要なのは新しい魔法が増えている事だ。
時。
時魔法だ。
おいおい、時魔法だと? 時を操るのか? これまた凄い魔法が増えたものだ。そして手に入ったBPが『3』だ。おあつらえ向きに振れと言っているかのようだ。
……やるしかないよな。
これが力、か。
確かに秘宝と呼ばれるだけのことはあるかもしれない。
俺は時魔法にBPを振り分ける。
魔法が増える。
増えた魔法は『タイム』だ。
そのままズバリだな。
さらにタイムへとBPを振り分ける。
俺はタイムの魔法を習得する。今回は特に痛みを覚えることもなく習得できた。すでに魔石から力を得ているからだろうか。
と、とりあえず魔法を使ってみよう。
――[タイム]――
魔法の効果が発動する。
タブレットが青く光る。俺はタブレットを見る。
そこには『18:56』と表示されていた。
え?
あれ?
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