5 福島県について⑤地元
さて、そんないわき市の最北に位置するのが私の地元、
久之浜町・大久町・
いわき市が合併した後の1968年に発見されたこの化石に双葉の名前が付いているのも興味深いところではありますが(発見者は久之浜の人ではありませんし)、3.11では双葉群ではなくいわき市の一部になってしまったせいか、はたまた28~31キロという微妙な距離のせいか、自主避難及び屋内退避のみ(2011年4月には解除されている)で原発の指定区域からは外れ、当然漁業関係者以外補償は全く無いのが現状です――また仮に貰えたとしても、高額な補償であるのかどうかは不明です。
「双葉群のままなら補償金が貰えたかもしれない」と言う方もいます。30キロ圏内で区域指定されなかったのはなぜか、8年経った今でも私にはわかりません。
3.11の被害はいわき市、福島県最大と言っても過言ではないと考えていますが、それは地震・津波・火災・液状化・原発・風評被害という六重苦に加え、報道がろくにされなかったことが理由として挙げられます。いつも報道されるのは原発に関する相馬・双葉地区のことだけであり、津波被災地域は地元でさえ報道するかしないかといったところ。これに関しては関東圏の被災地に通じるところがあります。もちろん、久之浜は山も海もある地域であり、山側は原発に近いものの地震の揺れは全く感じなかったということもあり、同じ町でも被害に差があります。
「こんにちは」の章で私は地元が嫌いだと明記しましたが、正直ろくな思い出がありません。あるのは地元人の祖父ですらマズいと言った料理店や生活する上で必要最低限のコンビニやスーパー、娯楽ならパチンコとラブホテルくらいで、地元の名産品なんていうのも思いつきません。3.11以降やたら名産品や地元にまつわるものがアピールされていますが、私にとっては知らないものばかりです。
さらに、これは田舎によくあることかもしれませんが、幼稚園から中学校までほとんど顔ぶれが変わらないため最悪の場合10年ほど同じ場所で一緒に過ごさなければならず、そのせいもあってか、私の代では転校していく人が続出していました。
「正しい人ほど損をする」
「良いことをすればするほど見返りと感謝が期待できなくなる」
環境で民度が高いとはとても言えず、同級生ではいじめのターゲットが何人もおり、一人に集中攻撃が無かったのは果たしてある意味良かったのかどうなのか未だに答えが出せません。とにかく何をやっても非難され、先輩方のやり方を参考にしてもダメという理不尽さ。
個人的には町から離れれば離れるほど良い人に出会い、地元を離れた高校入学以降や、地元民と出会わない習い事や塾では人間関係で困ったことが無いため、余計に印象が悪化する有様です。嫌いだとはっきり言ってしまうのは心苦しくもありますが、そんな場所ですから仕方ありません。
これを聞いて、おそらく「じゃあなぜさっさと地元を離れなかったんだ」という人がいるでしょう。このような質問は3.11直後にもよく聞かれました。
でも、狭い世界にいると「きっとどこもこんなもんだ」と思ってしまうもので、「もっと酷い目に合っている人と比べたら、たいしたことは無い」となるわけです。また、親の転勤もないのにいきなり引っ越しするというのは、手続きや費用を考えると簡単に決められるものではありません。「すぐに引っ越せ」と言われて実行出来るほど、私の家はお金持ちではありません。
また3.11直後ならば、壊れた家や当時忙しかっただろう引っ越し業者のことを考えると尚更不可能ではないかと思われます。全壊認定を受けた家、つまり危険が多い家からの引っ越しを引き受ける業者がいるでしょうか? 当時私の家から家具を運び出してくれたのは、東京から来たボランティアの方々だったと聞いています。
というわけで、私は、3.11ではかなり複雑な気持ちを抱いています。復興に関しては前向きに考えたいものの、3.11後にいきなりアピールをし出す地元は冷ややかな目で見守っているのが現状です。心情としては、痛々しい方面で高校もしくは大学デビューし出した知人を見たときのものに近いかもしれません。3.11以前なら絶対やらなかったことばかり行っていますから、観光客も3.11以前よりむしろ増えているのではないでしょうか。
【3.11関連データ】
全壊:993
大規模半壊:320
半壊:618
一部損壊:494
罹災証明書発行:2,425
死者:69名(うち直接死47名、関連死10名、死亡認定・行方不明12名)
(2015年時点)
火災が起きたのは町の中心とも言える商店街付近。その後は一時期小学校校庭で営業していました。
なお、かつて私の家があったような沿岸部は区画整理され、現在は物理的にも入れません。
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