第10話
ボルスをボンネットに乗せたまま装甲車が走る。
ボルスは歯をむき出しにしながらフロントガラスを破り、今にも噛み砕きそう勢いで運転席に顔を寄せる。
「てめぇ!いったいどういうつもりで!」
だが、一瞬にしてポカンとした顔になった。
何故ならば。
「なんで頭だけになってんだお前」
運転席にあったはのは一つ目を半目にしているブライスの頭のみ。
首から下の部分は無くなっていたのだ。
「マジで死ぬかと思った。
蒼井家の長女やべぇわマジで……命辛々逃げてこれだぜ?
二度と関わりたくねぇ」
頭だけになっているブライスを見たボルスは頭が冷やされ、大きく息を吐いた後そのままボンネットの上に寝転がった。
「そんなにいい奴なのか、ちょっとくらい味見をしてみてもよかったかもな」
「ところでお前仕事は」
「あぁ?あー……」
「おいお前」
「まぁこまけぇこたぁいいじゃねぇか。
前金は貰ってんだろ?」
「て、てめぇ……俺がこんな姿になるまで時間を稼いだっつーのに!」
「まぁ落ち着けよ。
面白いことが起きやがったし、いいじゃねぇか」
「面白いこと?」
「もう一人だ。
もう一人
女と一緒にいた男のほうだ」
ボルスが指を一本立てながら嬉しそうに言う。
するとブライスは黙り込み、また頭をゴロンと横にした。
「なんだよ黙り込んで」
「いや、なんでもねぇ。
とりあえずさっさと帰るぞ」
「へいへい」
装甲車を遠隔操縦で運転していたブライスはあることを思い出していた。
それはこの仕事の依頼内容についてだ。
『久しぶり。
早速で悪いが依頼を受けてほしい。
だいたいわかると思うが君の相棒が接触した女の子についてだ。
ほかの組織の連中はきっと彼女のことを欲しがると思うけれど、どこかにもってかれる前に始末してほしいんだ。
できれば遺体も消してほしいんだけど、まぁそこは任せるよ。
前金はもう振り込んでおいたからよろしく頼むね』
あの奇妙なメールの内容を解読するとこのような内容になった。
妙に馴れ馴れしく、かつ一方的。
ブライスにとっては懐かしくも忌々しくも感じる口調だ。
なぜこいつが使っている口座や自分とボルスが組んでいるということを知っているのかは疑問には思わない。こいつはそういうやつだということ覚えている。
実際に多額の金は振り込まれており、ボルスがいるのなら楽勝な仕事ではあった。
しかし気になることが最後に一文追加されていた。
『もし、もう一人途中で目覚める人間がいるようなら仕事の成功失敗に関わらずに連絡をよこすように』
最初こそは意味の分からなかったことだが、ボルスの話を聞いて理解する。
この依頼者は例外がもう一人出現することを事前に知っていたのだ。
(何を知ってやがるんだ
ブライスは今回の依頼人の顔を思い浮かべながら予定の逃走経路に装甲車を走らせた。
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