冬休みの日々、葛藤
八谷 のりこ
○日目
冬はこたつに限る。すこしうとうとしていたなぁ。危ない危ない、こたつで寝ると風邪をひきやすいっていうからな。少し鼻水も出てきたかも。あ、みかんは風邪予防になるんだっけ。
机の上にある大量のみかんの山を崩しつつ、適当なテレビを見る。
こうも毎日雪だとなかなか外へ買い物にも行きたくないもので、さっきもちょうどネットで買い物をしたところだ。便利な世の中。日用品、消耗品、雑貨や食品。なんだって家から一歩も出ずに、なんならこたつの中から買えるなんてダメ人間になってしまうよ。便利って罪だな。いや、むしろダメ人間万歳、かな。
あ、お風呂くらいは入らなきゃなぁ。面倒だ。全自動全身洗浄機とか欲しいなぁ。何が嫌って服を脱がなきゃいけない。めんど〜〜い。寒いし。せめてお風呂場に暖房があればいいのに。
でも、こたつは意外と汗をかくので、この番組のキリのいいところでお風呂に行くことにした。今日はさっとシャワーだけにしよう。お湯沸かすのも面倒だ。
テレビの画面には駅伝が写っていた。それが生なのかダイジェストなのかはよくわからなかったけれど、自分がだらだらしている間にも実った努力があって、血と汗と涙を飲んだ悔恨があって、壮大かつノンフィクションのドラマがあって。青春の煌めきにあてられたのか、それともサボってるのが急にいたたまれなくなったのか、はたまた単なる気まぐれか、漠然と何かをしようという気持ちになっていた。
うーん、ダメ人間はまた今度なればいいや。今日は少し、がんばってみよう。
こたつ周辺のみかんの皮やらちり紙やらを片付ける。掃除機もかけよう。思ってたより埃はないけれど、とにかくみかんの食べカスだらけだった。ここの家主の主食はみかんなのか。少し虚しくなる。夜はなんか作ろう。
昨日の夕飯の洗い物もしていなかった。ここの家主はなんてやる気がないんだ。腹を立てつつ洗う。
あらかた掃除が終わったけれど、きっとここでこたつに入るとまた萎れてしまう。サクッとシャワーをしてこよう。あ、その前にお米の準備だけ。
シャワー上がり。夕飯の準備をする。冷蔵庫には野菜はあったけれど肉はなかった。仕方ない、野菜炒めかなぁ。白菜やピーマン、人参を一口大に刻んだ。
ピンポン。
突然鳴ったインターホン。最近のネット通販は早くて助かる。やる気が出た時も便利なものは使っていくべきだと思った。
届いたのは豚バラ肉と野菜とみかん。今日は肉野菜炒めにしよう。野菜は冷蔵庫に入れておこう。さっきのダメ人間な自分に少し感謝した。
ちょっと胡椒の効きすぎた肉野菜炒めと白米を食べ終えて、今日の働きに満足したところで、さっき届いたみかんをこたつの上に補充する。
少し休憩したら髪を乾かしてお皿を洗おうか。こたつに入って軽く伸びをした。
冬休みの日々、葛藤 八谷 のりこ @norikkkkkk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます