第11話 初めての授業
脚注
トロンコ
スレイヤーの持つ木の棒
魔女や魔法使いでいう箒と杖を兼用したもの。
ラマ
スレイヤーのまとうローブ。
◇◇◇
スレイヤーが操るテクニカとは、いわゆる魔法のように何でもありの便利な物ではない。
出来ることといえばせいぜい火を出し、水を出し凍らせ、風を起こし空を飛び、土を動かすことと、一部の上級スレイヤーが雷を操れるくらいのものだ。
スレイヤーなら自然に
はたして彼女は。
◇
月曜日、いよいよ授業がスタートする。
生徒達は校舎前の広場に集まった。
皆一様にトロンコを持ち、ラマをまとっている。
サラは意気揚々と実習に臨もうとしていた。
「1-Aのみなさん、集まりましたね。」
壮年の、ララーナ先生だ。
「私は風のテクニカ、ヴィエントを教えています。風を操るのはスレイヤーの基本中の基本です。これを伸ばすことで自在な飛行が可能になります。」
よぉーし!頑張って私も飛べるようになるぞー!
「それでは基礎練習を始めます。浮遊を行い、出来るだけ動かずに姿勢を維持してください。」
みな思い思いにトロンコに
一人を除いて。
ぴょんぴょん飛び跳ねていた。
「飛べ!飛べ!飛んでよーーーー!」
「ミス・スターリング!もっと風を感じなさい!」
「ふぬ~~~~~~~!」
一向に飛ぶ気配がない。
棒に跨がり飛び跳ねる姿があまりに
ララーナ先生は手のひらで額を覆う。
◇
壁に防火対策を施した校舎内の広い一室。
「ワシは炎のテクニカ、フェゴを教えとる。フェゴはええぞぉ。全てを焼き尽くす。えっえっえっえっえっ。」
不気味な
「ではまず皆にはロウソクに火を
生徒たちはいともたやすく火を灯していく。
一人を除いて。
「えーい!フェゴ!フェゴ!」
「ミス・スターリングぅ。真面目にやらんとその綺麗な黒髪、燃やしてしまうぞぉ。えっえっえっえっえっ。」
◇
次の授業は湖のそばで。
「はーい、みなさーん。水を発生させ、凍らせるテクニカ、エラグアの授業をはじめまーす。」
1-Aの担任、カーラ先生。
「ではそれぞれみなさんの前に置いてあるコップの中に水を発生させてみましょう~」
生徒たちは大なり小なりに水を発生させる。
一人を除いて。
「ふーーーーん、エラグア!」
シーン・・・。
「あら~」
◇
「この授業は土のテクニカ、スエロの技術を磨く。みんなちゃんとついて来いよ。」
長髪の若い、リネット先生。
「では土を動かして手のひらサイズの何か動物を造形してみろ。」
これには苦手な生徒が多いようだが、何かしら土を動かしている。
一人を除いて。
「むーーーーーん!スエロ!」
びくともしない。
「どうした。土を動かすくらいなら小学生でも出来るぞ。」
◇
「あああん、なんで出来ないのぉ~?」
サラはベッドの上で枕を抱えてうなだれていた。
「ど、どんまいだよ・・・。」
リッカが
「ねぇ~リッカ。どうやったら出来るようになるかな?リッカはいつから出来るようになったの?」
「わ、私も大したことは出来ないよ・・・。私に限らずスレイヤーはみんな5、6歳になると自然にテクニカが出来始めるみたい・・・」
「え~じゃあ私小学生以下じゃ~ん。なんかコツとかないの~?」
「う、う~ん、コツか分からないんだけど・・・」
「ふんふん、何でも言ってみて!」
期待の眼差しでリッカを見る。
サラの視線にリッカはちょっとどぎまぎする。
相変わらず目線は泳いでいる。
「え、え~と、よくテクニカの引き合いに出されるのが山火事なんだけど・・・。」
「山火事ぃ?」
「う、うん。山火事が起こる原因って色々あるんだけど、その中に風のそよぎで葉っぱ同士の
「へー!」
「た、例えばフェゴは発火そのものを起こすんじゃなくて、そよ風を起こし摩擦させること。そうすると発火する材料は気体中に整ってるから、それで自然に火が発生するっていうお話・・・」
サラは腕を組み首をかしげる。
「うーん・・・分かるような分からないような・・・。とにかく意識してやってみるよ!」
「う、うん。頑張って。」
だが二週間経ってもサラは一向にテクニカを習得出来ずにいた。
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