第8話 HR

脚注


トロンコ

スレイヤーの持つ木の棒

魔女や魔法使いでいう箒と杖を兼用したもの。


ラマ

スレイヤーのまとうローブ。



入学式が終わるとクラス別に各教室に集まる。

これから軽くホームルームが始まる。


サラは学校から貸し出された予備のラマをまとっていた。

教室はAクラス、席についてからも教室の中はざわめいていた。


「嘘でしょ!?なんでオルディが特待生!?」「どんな不正使ったのよ!?」


ざわめきの原因はやはりサラが特待生と発表されたからだ。

他に特待生と発表されたのはルーシー・ハーグリーヴスという名の人、一人だけだった。


「みなさーん、お静かにー!」


メガネをかけた若い先生が声を発する。

徐々に教室は静まっていく。


「はい、みなさん、入学おめでとうございま~す。先程も紹介しましたが私はカーラ・ウォーノックといいます。Aクラスの担任です。気軽にカーラ先生と呼んでくださ~い。」


軽く拍手が起こる。

おっとりした先生だなぁとサラは思った。


先生は授業割のプリントを配る。


「授業の説明をしていきますね~。授業のほとんどはスレイヤーの実技・実習です。たくさん学んで力をつけてくださ~い。」


ついにスレイヤーの技術を学べる。

サラはわくわくしていた。


「それから歴史学も全員受けてもらいます。あとは薬学、暦学、物理学、科学のうちから2つ、選択制です。次のホームルームまでに決めておいてくださ~い。」


選択制かぁ、物理と科学はお腹いっぱいだし、薬学と暦学にしようかなぁ。


「それではみなさんには軽く自己紹介をしてもらおうかな~。名前と簡単に抱負を言っていってくださ~い。ではそちらのあなたから。」


先生は右端前の生徒に平手を指した。


「はい、メア・フレッチャーです。家が配送業をしているのでもっと飛行技術を伸ばして家の手伝いが出来たらって思ってます。」


指されたボーイッシュな子がきびきび答える。

軽く拍手が起こる。


「では次の人~」


それから順番に生徒が名前と抱負を語り、拍手をする。

それが繰り返された。

サラは左側に座っていたので順番は最後のほうだ。


「ルーシー・ハーグリーヴスです。」


真ん中くらいに差し掛かった時だ。

あ、学校まで乗せていってくれた子だ。

そのソバージュがかった綺麗な金髪を覚えている。

同じクラスだったんだ。

そういえばもう一人の特待生とも同じ名前だ。


「抱負は・・・そうですわね、一番になることです。」


毅然と言い放つ。

ひときわ大きな拍手が起きる。


「すごい、ルーシー堂々としてる」「やっぱルーシーだよ」「私、一生ついていくよ」


小さくそんな声が聞こえる。

うわ~すっごい人気だなぁとサラは思った。

それからしばらくしてサラの番がくる。


「では次の人~」


サラはスゥと息を吸い込む。

「はい!サラ・スターリングです!夢はアリス・スールシャールのような立派なスレイヤーになることです!」


隣のクラスにまで響きそうなくらい元気な声を発する。

シーン・・・。

あれ?


ドサドサドサ。

先生が手に抱えていた書類を落とす音だ。

生徒達が先生に注目する。

先生は落とした書類をかき集めながら、


「あーごめんなさい。続けて続けて~」


教室は静まり返っている。

みんな聞こえなかったのかな?

もう一度言う。


「夢はアリス・スールシャールのような立派なスレイヤーになることです!」


シーン・・・。

あれ?


誰かが言った。


「・・・アリス・スールシャールって、誰?」

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