第7話 入学式

脚注


エスクラペス国

サラの住んでいた国。


レスレクシオン

スレイヤー達の住む国。


トロンコ

スレイヤーの持つ木の棒。

魔女や魔法使いでいう箒と杖を兼用したもの。


ラマ

スレイヤーのまとうローブ。


◇◇◇


2人を乗せた長い棒は校舎前にある石像の前に着地した。

校舎は石造りの立派な外観をしていた。

「ここがベルナール高校・・・!」


サラにとっては感慨深いものがあったが、思いを馳せている時間はなかった。


「入学式の会場は1階の多目的ホールですわ」


「わかった!」


2人は小走りで会場に向かう。

扉を開けるとその会場はガヤガヤと賑やかな喧噪に包まれていた。


「私はこれで、ごめんあそばせ」


金髪の少女は人混みに紛れていく。


「助かったよー!ありがとー!」


その背中に感謝を述べる。


「静粛に!」


大きな声が響くと会場は静まっていった。


「ただいまよりベルナール高等学校の入学式を始めます。10人の横隊の列を作ってください。今年の入学生は98名、9列と8人の隊が1列出来るはずです。」


声を発していたのは壮年の女性。

おそらく先生だろう。


入学生達は列を作っていく。

先生達もズラッと入学生と向かい合って前に並んでいく。

サラは一番後ろの8人の横隊の一番右端に並んだ。


そこでサラは気づく。

みなローブをまとい、手には木の棒を持っている。

サラは私服の上にリュックを背負った状態だった。

当然ローブも棒も持っていない。

や、やばい・・・なんとか見つからないようにしないと・・・。


「では校長、よろしくお願いします。」


「コホン」


校長と呼ばれた熟年の女性が話始める。


「えーみなさん、入学おめでとうございます」


から始まり、この学校の歴史はうんたらかんたら・・・。

サラは話を聞くのをそっちのけ、何とか先生の目に入らないように挙動不審に体を動かしていた。

同じ隊の少女達は、サラをチラチラ見るとクスクス笑う。


校長の話は30分ほど続いた。

その次に先生達の自己紹介が20分ほど。

次にクラス分けが発表される。


「3クラスに分かれてもらいます。Aクラス33人、Bクラス33人、Cクラス32人です。一人ずつ名前とクラスを言っていきます。呼ばれた者は大きく返事をするように。」


壮年の先生は名前とクラスを告げ、新入生達は返事をしていく。

やばい・・・目立たないように返事しないと・・・。

大丈夫、返事するだけなら見られないはず・・・。

やがてサラの名前が呼ばれる。


「サラ・スターリング!あなたはAクラスです!」


「は、はぁい・・・」


「何ですかその気の抜けた返事は!もう一度!」


その瞬間だった。

隣の少女がわざとサラに腰をぶつける。


「うわっ」


サラは隊からはみ出、横に倒れ込む。

壮年の先生と目が合う。

先生の顔はみるみる怒気をはらませる。


「サラ・スターリング!一体なんですかその格好は!?」


クスクスと新入生のほうで笑いが起きる。


「あ、えーと・・・」


「トロンコとラマは!?」


トロンコとはスレイヤーが持つ木の棒、ラマはスレイヤーがまとうローブのことである。

固有名詞多くてすいません。


「えーと・・・そのですね・・・今日が入学式って知らなくて―――」


「言い訳は結構です!」


壮年の先生はサラの前までやってくる。


「神聖な入学式に何を考えているんですか!」


「ひー、す、すいません・・・」


「すいませんで済みますか!」


「まぁまぁララーナ先生。」


すると校長先生もこちらに歩み寄りつつ怒鳴りつけていた先生を諫止かんしする。


「彼女の言い分も聞こうじゃありませんか。」


「こ、校長・・・。」


ララーナと呼ばれた先生がたじろぐ。

校長が続ける。


「ミス・スターリング、あなたはエスクラペス出身でしたね」


「は、はい。3日前にエスクラペスを出発してレスレクシオンについたのが先程でして・・・」


「なるほど、それで準備が出来なかったと」


「はい・・・」


「確かに3日前に1日入学を早めました。通達が出来なかったのはこちらの落ち度でしょう。」


「こ、校長!簡単に非を認めるなどと―――」


「いいえララーナ先生。誇り高きスレイヤーなら己の過ちを認め、謝ることが出来るはずです。」


壮年の先生はグッと口をつぐむ。

校長先生はサラに向き直る。


「遠い国からよくおいでになりました。ようこそベルナール高等学校へ、ミス・スターリング」


会場がざわめく。

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