第4話 船の上で

脚注


エスクラペス国

サラとフランカが住む国。


レスレクシオン

スレイヤー達の住む島。


アンノブル

レスレクシオンの民。女性のみを指す場合はスレイヤー、男性を含めるとアンノブルと呼ぶ。


◇◇◇


「ふううううううんよく寝た~」


アリアドス国北東、ルスティグに到着する。

ここはアリアドス第二の都市、グランクビスト州に属する港町だ。


「うわーすっごい、車めっちゃ走ってる」


車はつい15年ほど前に実用化し、その5年後に一般に普及されるようになった。

この国で発明されたものだ。

(とはいってもこっちの世界ほどの高性能のものではなく、時速最速80km程度のものだ)

サラの育った国、エスクラペスではまだまだ珍しい乗り物だった。


レスレクシオン島へ向かう船に乗り込み、船が発進すると甲板で海の風を感じていた。

冷気を帯びた潮風が彼女の首元ほどまである黒髪をなびかせた。


「うぅ・・・寒くなってきた・・・」


上着を重ね着る。

現在は春、サラの国エスクラペスはポカポカ陽気だ。

対してレスレクシオンは北に位置する島。

まだまだ低気圧が発達している。


サラはレスレクシオンを訪れるのは初めてだ。

本来入学試験は本校で行われるのだが、サラに関しては遠路ということで特別に便宜べんぎを図ってもらい、アリアドス国の首都、フォルスベリで行われた。

その時試験管に聞いたのだが、合格すればレスレクシオン出身以外の人間がスレイヤーの学校に初めて入学することになるのだそうだ。


一ヶ月後に合格通知が届いた。

サラが狂喜乱舞きょうきらんぶしたことは言うまでもない。

だがレスレクシオン国以外の初の生徒、サラにとってはそれは不安の種の一つだった。

レスレクシオンの国民、アンノブルは民族意識が強く、排他的という噂も聞く。

(レスレクシオンの女性のみを指すときはスレイヤー、男性を含めるとアンノブルと呼ぶ)

いわばバイソンの群れに羊を一匹放り込むようなものだ。


「う~んでも考え込んでも仕方ないからな~」


顎に手を付けいっちょ前に悩む姿勢をみせる。


「将を射んとするならまずは馬からだしね」←?


サラは良くも悪くも楽観的な性格をしていた。


船を走らせること一刻、目的地の向こうに陸が見えたのが先か、それが見えたのが先か。


「うわ~~~~~!あれが千年樹!ここから見えるってことは相当でっかいぞ~~~~!」


船が進むに連れ、だんだんとその雄大にそびえ立つ巨大な樹木は姿を現した。

スレイヤー達にブリサを供給する大木、千年樹。

(ブリサとはいわゆるマナとかそういう類のものね)


「あれがスレイヤー達の住む島、レスレクシオン・・・!」


不安はあったが、それ以上にわくわくが止まらなかった。

テンション爆上げなのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る