第3話 月刊スレイヤー
脚注
レスレクシオン国
スレイヤー達の住む島。
エスクラペス国
サラとフランカが住む国。
◇◇◇
スレイヤーたちの住む島、レスレクシオン国には3つの高等学校があった。
だがサラには3つの内から選べる資格がなかった。
2つの学校の入学応募条項には
[レスレクシオン国で生まれ育ったスレイヤーの資質のある者]
とあったからだ。
対してもう1つの学校の応募条項は
[スレイヤーの力を有する者]
とだけあったのだ。
その学校の名はベルナール高校、今回サラが入学することになった学校だ。
レスレクシオン島までの道のりはサラが住んでいた町、モラタ町から馬車で2つ隣町まで行き、汽車に乗り、島国エスクラペスの最北端の町に着くとそこから船に乗る。
北に海を渡って大陸国アリアドスに着くと、また汽車を乗り継ぎ30時間かけ北東の港へ向かう。
そこから船で東に進みレスレクシオン島にやっと到着という長旅オールパックだ。
所要時間は丸3日。
モラタ町からレスレクシオン島まで直線距離にしておよそ6.800km。
こっちの世界で言うなら東京からオーストラリアのシドニーまでくらいの距離と考えてくれていい。
◇
「くああああああああ」
道中アリアドスの汽車の中、サラは大きく伸びををした。
「あー暇だ・・・」
車窓に映る自分の顔を見ながら口を漏らした。
人は一人の空間になると色々と考えてしまうものだ。
サラも例外ではない。
新しい学校、それもあれだけ憧れていたスレイヤーを志せる学校だ。
周りに知っている人なんて皆無だ。
友達はできるだろうか。
授業についていけるだろうか。
ご飯はおいしいだろうか。
おやつは出るだろうか。
お昼寝時間は何時間だろうか。
サムサ食べたい。
期待、不安、安堵、恐れ、希望、動揺、切望、緊張、様々な情念が渦巻いた。
それも当然だろう、0からスタートするのだから。
過去の記憶も混ざり合い思考は混沌としていた。
「アリスさんに会えるかな・・・」
あの日言えなかったお礼を言いたかった。
サラはふと、フランカと大喧嘩したことを思い出した。
◇
[月刊スレイヤー]という世界で刊行されている月刊誌がある。
世界で活躍するスレイヤーの特集記事をまとめたものだ。
災害の件以降サラはフランカに毎月買って買ってとせびるのだった。
スレイヤーは竜がほぼ滅亡してもなお、様々な分野で世界で活躍している。
その中でも代表的な物を挙げると、1つはサーカス団だ。
スレイヤーによるド派手なパフォーマンス。
空を自在に飛び回りながら炎を出したり、水を出したり、雷を操ったり。
語彙力がないので上手いこと言えないが、とにかく見た人は絶対に忘れないようなインパクトを打ち付けられる。
このサーカス団はキャラバンのように世界を横断しながら活動してるので、なかなか簡単に見に行けるものではない。
団が訪れた国には莫大な経済効果があると言われている。
一度でも見られれば一生周りに自慢出来るほどレアな体験なのだ。
他にスレイヤーの活躍で代表的なものを挙げると、災害復興支援団だ。
その名の通り、世界の被災地やはたまた戦地などに赴き、救助活動、インフラの復興などを行う団体だ。
炎や水を出し、土を動かす力が存分に生かされるのだ。
サラからしたらこの団だけは絶対外せない。
なぜなら彼女が所属しているから。
そう、かつてサラを救ったアリス・スールシャール、その人だ。
アリスは[月刊スレイヤー]でも人気で、何度も表紙を務めた。
サラは彼女の記事を切り抜きひたすら集めた。
記事によるとどうやらいいところ出のお嬢様だということだった。
18歳主席で高等学校を卒業後、すぐに災害復興支援団に入団。
わずか1ヶ月で師団長に任命された。
これは異例中の異例のことであった。
普通は少しずつ功績を積み立て、周りを納得させた上でなれるものだ。
師団長まで上り詰めるにはどんなに有能な人物であっても10年はかかるのが通例だった。
何故彼女が1ヶ月で師団長になったのかというと、血筋、理力のポテンシャル、的確な判断力はもちろんのこと、それに加え彼女には予知能力があると言われた。
被災する可能性のある場所を漠然にだが予知することが出来たのだ。
そういうこともあり、彼女が自由に動けるようにと大団長の一存で師団長任命が決まったのだった。
周りには当然少なからずの動揺があった。
だがそんな喧噪をよそに彼女は目まぐるしく活躍し、実力で周りを黙らしたのだった。
これ全部[月刊スレイヤー]に書いてたことね。
つまりサラの国が被災したときも、事前に察知していたから救助があんなにも迅速だったのだ。
ある日、サラが小等部の3日間の修学旅行から帰ってきた時のことだった。
部屋に集めていたアリスの記事と表紙の切り抜きがなくなっていたのだ。
すぐにフランカを問い詰めた。
「えー?一昨日サラの部屋掃除した時、間違えて捨てちゃったかもねぇ・・・」
サラは激怒した。
一日中フランカを攻め立てた。
フランカもとうとう堪忍袋の緒が切れ、反撃に出た。
そこからは
たまらずサラは家を飛び出し夜になっても帰ってこなかった。
フランカは夜通し探し回った。
翌朝を迎える前に隣町からの連絡を受けて、フランカはサラを向かいに行った。
帰り道、朝の陽光を背に浴びながら互いに謝った。
[月刊スレイヤー]を今後一年間無条件で買い与えるという条約を結び、この戦争は集結した。
世に言う第一次サラ-フランカ大戦であった。
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