第17話 土曜日 その4(電車内その1)

電車内


和寒わっさむ 茂辺地もへじ(以下 和と書きます)「おい、美流渡みると

赤井川あかいがわ 美流渡(以下 弟と書きます)「ん?どうした」

和「お前さあ、いつから伊香牛いかうし先輩を知ってたんだ?」

弟「去年の4月だよ。姉ちゃんが高校に入ってすぐくらいかな、うちに御崎みさき先輩が

  遊びにきたんだけど、その時が初対面」

和「ふーん。それでさあ、どうしてお前は『御崎先輩』と言ってるんだ?」

弟「僕は一番最初に挨拶した時には『伊香牛先輩』って言ったんだけど、先輩の方

  が「あらー、そんなに堅苦しい事を言わなくていいから『御崎』で構わないわ

  よー」って言ったから、それからずうっと御崎先輩って呼んでるよ」

和「マジかよ!」

弟「お前、何をそんなに驚いてるんだ?」

和「ついでにもう1つ聞きたいんだけど、お前のスマホの中に伊香牛先輩の連絡先

  が入ってるなどという事はないだろ?」

弟「なんだ、そんな事か」

和「うわっ、その口ぶりだと入ってるな!」

弟「そうだよー。3月にスマホを買ってもらった日の次の日かな、フラフラって姉

  ちゃんのところへ遊びにきた御崎先輩が『番号教えて』って言ってきたから通

  信でやり取りしたから、御崎先輩の番号もアドレスも入ってるよ」

和「はああ・・・俺はお前が羨ましいぞ!」

弟「へ?・・・どういう意味?」

和「あのなあ!SSクラスの生徒会長を別格とすれば、俺の見立てでは我が清風山せいふうざん

  高校でSクラスと呼べる女子は、3年生は胸と性格を除けばSクラスの風紀委

  員長と剣道部の高ビー先輩を含めて四人、2年生は柔道部の脳筋女先輩を含め

  ても三人、1年生でも我が2組のかえでちゃん、みどりちゃんを含めて三人の10人

  しかいない!伊香牛先輩はSクラスは無理としても、十分にAクラスにランク

  インする程の可愛い先輩だあ!それほどの人から『美流渡君』などと呼ばれて

  いるという事実は、俺から見たら羨ましいの一言だぞ!!」

弟「ふうん」

和「お前さあ、結構鈍感だなあ」

弟「どういう意味だ?」

和「はああ・・・まあいいや。それより美流渡、お前、自分の姉の事をどう思って

  るんだ?」

弟「煩わしい存在、以上!」

和「お前、そう言いつつ姉から離れないよな」

弟「はあ?あんな腐ったような姉のどこがいいんだ?そんな奴がいたら僕が知りた

  いくらいだ」

和「そう思ってるのは美流渡だけだ」

弟「どういう意味だ?」

和「あくまで俺個人の見立てだけど、お前の姉は2年生三人のSクラスに次ぐAク

  ラスの中ではトップ、いや、四人目のSクラスにしてもいいくらいだ」

弟「はあ?お前、目が腐ってるんじゃあないのか?」

和「お前がどう思おうと勝手だが、他の三人のSクラスは美少女と言っても誰も文

  句を言わないだろうけど、お前の姉の場合は小学生みたいなロリ顔だけど校内

  で5本の指に入るのは確実なほどの巨乳だから、そのギャップが学年を問わず

  人気を集めてるのを知っているのか?」

弟「・・・・・」

和「それに、お前の姉に『付き合って下さい』と言ったけどアッサリ断られた人の

  数は、両手両足の指だけでは足りないくらいだという話を聞いた事があるし、

  実際、我が1年2組でも無謀にもお前の姉に挑んだ馬鹿が既に2人もいるけど

  アッサリ玉砕したぞ」

弟「・・・・・」

和「お前はある意味、姉を誤解してるぞ」

弟「・・・あのさあ」

和「ん?なんだ?」

弟「まさかとは思うけど、お前のスマホ、電話番号の登録が殆ど入って無いって事

  はないよなあ」

和「ギクッ!」

弟「それも男ばかりで、母親と二人の姉以外の女子は入ってないとかのオチは勘弁

  してくれよ」

和「さ、さあ、何の事ですかあ・・・」

弟「僕が羨ましいというのは、それが理由じゃあないよなあ」

和「ち、ちがうぞお」

弟「声が裏返ってるぞ」

和「う、うっせー」

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