第10話 放課後 その1

放課後


伊香牛いかうし 御崎みさき(以下 伊と書きます)「おーい、美利河」

赤井川あかいがわ 美利河ぴりか(以下 姉と書きます)「ん?どうした?」

伊「これから暇?」

姉「特に何もないわよ。どこかへ行くの?」

伊「じ、実は・・・」

姉「どうしたのー?ハッキリ言わないと分からないわよ」

伊「・・・あんたと付き合いたいって言ってきてる先輩がいるのよ」

姉「はあ!?」

伊「正確には『あんたに直接会って話をしたい』って言われたんだけど、その指定

  の場所が体育館裏だからさあ・・・」

姉「あー、なるほど。あそこはの定番だからねー」

伊「それでー、あたしが言伝ことづてを頼まれたって訳」

姉「それって、一体誰なの?」

伊「行けば分かるわよ。あたしだってこの場で個人名を言いたけど、

  の弓道部の自称『清風山せいふうざん高校の那須なすの与一よいち』と言えば美利河なら分かる

  わよね。でも、それをこの場で言ったら意味が無いでしょ?」

姉「あー、パート3の方ですかあ。野球部のパート1も陸上部のパート2も定番に

  なってるからねえ」

伊「あんたに直接話を持って行くと露骨に嫌な顔をされるっていうのが分かってる

  から、あたしに頼んだって事じゃあないの?」

姉「でもさあ、これって絶対に行かないと駄目なの?」

伊「ちょ、ちょっと待ってよ!あんたさあ、門前払いするつもりなの?」

姉「だってさあ、毎回毎回断るのも大変なのよー。いい加減に諦めて欲しいんだけ

  ど、シツコイ!」

伊「あんたさあ、自分がモテモテだって事を自覚しなさいよー」

姉「だってさあ、わたしよりも御崎ちゃんの方が可愛いわよ。ぜーったいにわたし

  は揶揄われるのがオチだからさあ」

伊「・・・可愛いだけが女の武器じゃあないって事も自覚しなさいよね」

姉「へ?」

伊「はーーーー・・・いつの間にかあんたの方が使とい

  う事実が、あたしをますます卑屈にさせているって事を理解して欲しいわ」

姉「あれー、という事は本当は『入れて誤魔化している』か『寄せて上げて』を

  使ってるのお?」

伊「さ、さあ、何の事ですかあ?」

姉「みさきちゃーん、声が裏返ってるわよー」

伊「き、気のせいよ」

姉「もしかして、その両方だったりして。いや、『6つ』という時点で両方なのは

  確定ね」

伊「う、うるさい!」

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