第9話 その日の昼休み

昼休み


伊香牛いかうし 御崎みさき(以下 伊と書きます)「ぴりかー、お昼ご飯にしよー」

赤井川あかいがわ 美利河ぴりか(以下 姉と書きます)「いいよー」

伊「それにしてもさあ、いきなり授業中に『フレペさん』は無いでしょー」

姉「あー、ゴメン。わたしもさあ、自分の苗字の由来を知らなかったからね」

伊「でもさあ、美利河っていう名前は、本来はアイヌ語の地名でしょ?」

姉「まあ、それは事実よ。アイヌ語の『ピリカ・ベツ』、つまり『美しい・川』と

  いう地名に美利河という漢字を当てはめたんだからね」

伊「でも、綺麗な字を当てはめたわねー。先人たちのネーミングセンスに感謝しな

  いといけないわね」

姉「そういう訳ですから、読者の皆さんもキラキラネームではないって事を理解し

  てくださいねー。キラキラネームと間違

  えないでくださいねー」

伊「ま、かくいうわたしも、ねー」

姉「美流渡みると和寒わっさむ君もだよー」

伊「名前しか出てこなかったけど、錦岡にしきおか先輩やかえでさん、みどりさんもだよー」

姉「そうそう!」

伊「でもさあ、会長が美利河を『キラキラちゃん』と呼ぶ気持ちが分からない訳

  じゃあないけどねえ」

姉「まあ、たしかに。それに・・・」

伊「あれ?・・・美利河、何か悲しそうな顔をしてるけど、何かあったの?」

姉「はー・・・あったも何も・・・」

伊「あ、あのー・・・」

姉「・・・・なにしろ平成の声を聞く前の話だからね。かつて存在していたのは事

  実だけど、今は存在してないのよ」

伊「も、もしかして・・・」

姉「ん?御崎ちゃん、どうしたの?」

伊「あんたは本当はだったんだあ!!」

姉「そ、そんな事はないわよ!足だってちゃんとついてるし、現に御崎ちゃんとも

  話をしているって事は幽霊じゃあないっていう証拠よ!」

伊「じゃあ、何でさっきから焦りまくりなの?」

姉「そ、それは・・・とにかく、わたしの名前は赤井川美利河!決してキラキラ

  ネームじゃあないって事だけは忘れないで!!」

伊「何か支離滅裂・・・」


和寒わっさむ 茂辺地もへじ(以下 和と書きます)「おーい、みるとー」

赤井川あかいがわ 美流渡みると(以下 弟と書きます)「ん?どうした?」

和「そういえば、オレもいつかは聞きたいと思ってたんだけど、お前の姉さんの名

  前の意味はアイヌ語で『美しい』とか『綺麗』とかの意味があるって聞いた事

  があるけど、お前の名前の意味は何だ?」

弟「そんなの簡単だ。アイヌ語の『シルウトロオマプ(sir-utor-oma-p)』つまり

  『山の・間に・ある・もの(川)』という意味だ」

和「へー、オレはてっきりキラキラネームだと思ってた。結構、お前は物知りだな

  あ」

弟「当たり前だ。僕はこの世界の創造主の言葉を代読しているんだからな」

和「はあ?」

弟「そういう君だって『オヒョウニレの木の傍ら』を意味するアイヌ語の『ワッ・

  サム』と『静かな川』を意味するアイヌ語の『モ・ペツ』だから、本来なら

  『楡木にれき静溢せいひつ』とでもすべきなのかもしれないな」

和「おい、美流渡!お前、目が何か変だぞ、さっきから喋り方も機械的だし、どう

  したんだあ!?」

弟「ん?・・・あのー・・・僕、さっき君から話しかけられた後からの記憶がすっ

  ぽり抜け落ちてるんだけど、何か変な事を言ってなかったかい?」

和「美流渡・・・お前こそが現人神あらひとがみだ」

弟「はあ?」

和「いや、アイヌの神に敬意を表して、お前の事は『カムイ』とでも言うべきなの

  かもしれない」

弟「・・・・・」

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