第8話 特別授業

2年7組 特別授業(日本地理) アイヌ語と地名


先生「えー、北海道の地名が『美しい』と言われるのは、アイヌ語の地名を本州か

  ら来た人が後に漢字表記で表した時に、出来るだけ綺麗な漢字、美しい表記に

  した為ともいわれてるんだぞ」

生徒全員「・・・(ウン、ウン)・・・」

先生「有名な所で言えば、北海道の空の玄関、新千歳空港がある千歳市の『千歳ちとせ

  だが、元々、この地は谷間を流れる川からアイヌ語で『大きな窪地』を意味す

  る『シ・コツ』と呼ばれていたが、この『シコツ』という発音が「死骨」に通

  じて縁起が悪いという事で、江戸時代に当時の函館奉行が、この地に多くのタ

  ンチョウが生息していたことから、「鶴は千年、亀は万年」の故事にちなんで

  『支笏川』を『千歳川』と改名し、これが千歳の地名の語源となっているんだ

  ぞ」

生徒A「へえ、知らなかった」

生徒B「オレも初耳」

生徒C「あー、わたしは知ってたよー」

先生「アイヌ語の発音を漢字表記に当てはめた例として、『丘の町』として知られ

  る美瑛びえい町の美瑛とは、元々はピイエ(Piye)、つまり『脂ぎった川』とい

  う意味だが、美瑛川の水源には十勝岳があり、かつては硫黄で川の水が乳白色

  に濁っていた為だけど、これを本州から来た人が『ピエイ』と捉えたから、ピ

  エイを美瑛という漢字に当てはめたのが由来とされてるぞ」

生徒D「あー、オレ、美瑛に行った事があるよー」

生徒E「わたしもあるよー」

生徒F「おれ、十勝岳に登った事があるぞー」

先生「ただ、アイヌの人々は文字を持ってなかったから、同じ発音で違う漢字を当

  てはめた物もある。例えば、『江差えさし』と『枝幸えさし』なんかがそうだ。あるいは、

  アイヌ語では同じ発音の場所なのに、アイヌ語の意味を漢字表記した場所と発

  音を漢字表記した場所があるぞ。例えば、『砂浜の多い川』を表すアイヌ語の

  『オタ・ウシ・ナイ』を意訳した砂川すながわ、音訳した歌志内うたしないなんかがそうだ」

生徒G「うっそー、オレ、砂川出身だけど知らなかったあ」

生徒H「わたしも知らなかったなあ」

先生「同様に、十勝とかちの中心地、帯広おびひろは本来はアイヌ語の『オペレケレケプ』つまり

  『川尻が幾つにも裂けている=帯のように広い川』を意訳した物なんだぞ。他

  にも赤井川あかいがわはアイヌ語の赤い川を意味する『フレ・ペッ』、まあ、鉄分を含ん

  だ川の水が原因で川底が赤くなっていた事に因んで赤井川と名付けられている

  んだ」

赤井川あかいがわ 美利河ぴりか(以下 姉と書きます)「えーーーーーー!!!!!!」

先生「おい、赤井川!一体どうしたんだあ?」

姉「わたしって、本当はフレペさんだったんだあ!」

生徒全員、先生「・・・・・」


休み時間


和寒わっさむ 茂辺地もへじ(以下 和と書きます)「おーい、さっきの授業中、ドデカイ叫び声

  が聞こえたけど・・・」

赤井川あかいがわ 美流渡みると(以下 弟と書きます)「気のせいだろ?」

和「何となくだが、お前の姉さんの声のように聞こえたが・・・」

弟「気のせいだろ?」

和「お前はいっつもクールだな」

弟「気のせいだろ?」

和「おい美流渡、さっきから『気のせいだろ?』としか言わないのは何故だ?」

弟「・・・(姉ちゃん、あんな学校中に聞こえるような奇声を上げたら恥ずかしい

  事この上ないんだから、マジで勘弁してくれよお)・・・」

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