第7話 体育の時間 その2

3時間目の休み時間


和寒わっさむ 茂辺地もへじ(以下 和と書きます)「おーーーーー!!!!!」

赤井川あかいがわ 美流渡みると(以下 弟と書きます)「おい、どうしたんだあ?いきなり外を見

  て奇声を上げるとは?」

和「お前のお姉さんのクラスが次は体育だあ!」

弟「そういえば、今日はランニングがどうのこうのって言ってたなあ」

和「なにー!という事は体操服姿で胸をブルンブルン振るわせて走るって事じゃあ

  ないかあ!!」

弟「ふーん」

和「おい、美流渡!これほどの絶景なのにどうしてお前は無関心なんだ!」

弟「べつにいいだろー」

和「だったらオレと席を代わってくれよお。オレは廊下側最後方だから外を見れな

  いんだぞ」

弟「出席番号順なんだから諦めろ」

和「女子の体操服姿を堂々見られる権利を奪われたオレの惨めさをお前は分からん

  のか!」

弟「興味ない」

和「お前だって姉の体操服姿を本当は見たいんだろ?」

弟「見たら最後、呪われる」

和「お前、中学の時から全然変わってないな。逆に姉を意識し過ぎてるんじゃあな

  いのか?」

弟「僕にとって負担以外の何者でもない」

和「なんでだあ?オレから言わせればお前の立場は贅沢の極みだ」

弟「お前だって姉が二人、しかも公立とはいえ二人とも高校生なんだろ?そっちの

  方が恵まれてるぞ!」

和「あの風紀委員長とタイマン張れるくらいだからな・・・」

弟「僕は大きいのは嫌いだ」

和「だったらオレと立場を代わってくれよお」

弟「それは断る」

和「マジでムカつく!」


赤井川あかいがわ 美利河ぴりか(以下 姉と書きます)「みさきちゃーん、どうしよう、どうしよ

  う」

伊香牛いかうし 御崎みさき(以下 伊と書きます)「はあ?あんたさあ、まだ体育が始まる前だ

  っていうのに何を心配してるの?」

姉「美流渡が校舎から見てるかと思うとドキドキしちゃって息苦しいのよお」

伊「・・・・・」


4時間目 1年2組    世界史(教室)  

     2年7組・8組 体育(グラウンド)


先生「・・・えー、西暦1077年と言えば日本では平安時代だ。院政で知られる

  白河上皇がまだ天皇だった頃だ」

弟「・・・・・」

和「・・・(くっそー、美流渡の奴、普段にも増して澄ました顔して授業に集中し

  てやがるぞ)・・・」

先生「・・・神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世がミラノの大司教などを勝手に任命し

  たから、時のローマ教皇グレゴリウス7世と対立し、ハインリヒ4世は教皇グ

  レゴリウス7世の廃位を宣言したけど、これに対してグレゴリウス7世は、ハ

  インリヒ4世の破門と王位の剥奪を宣言する事態になった」

弟「・・・・・」

和「・・・(今頃は体操服を揺らしてランニングしているのかと思うと・・・それ

  を見れないとは屈辱の極みだぞ!)・・・」

先生「ハインリヒ4世は教皇に許しを請おうとして、1077年1月にカノッサ城

  門にて『カノッサの屈辱』と呼ばれる事件が起こるのだが・・・」

弟「・・・・・」

和「・・・(くっそー、美流渡の態度はまるで聖人だぞ。それに比べてオレは裸足

  で地面に額を擦り付けるようにして詫びまくる敗者そのものだあ!)・・・」

先生「・・・結構有名な出来事だから、君たちもハインリヒ4世が取った行動を知

  ってるんじゃあないか?そうだなあ、和寒、答えてみろ」

和「オレは胸をブルンブルン振るわせてランニングする女子高生を見たいから窓際

  の席に座らせてくれえ!」

生徒全員、先生「・・・・・」


伊「ちょっとー、美利河らしくないよー。いつもはドン尻なのに今日は先頭集団に

  食らいついてるなんてさあ」

姉「今日は気分がいいのよー」

伊「絶好のランニング日和だから?それとも8組の男子に気になる子でもいるのか

  なあ?」

姉「美流渡が見てるかと思うと普段より体が軽く感じるのよお!」

伊「・・・・・」

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