第4話 夕食後

夕食後


”トントン”

赤井川あかいがわ 美流渡みると(以下 弟と書きます)「はあい」

赤井川あかいがわ 美利河ぴりか(以下 姉と書きます)「お姉ちゃんだよー」

弟「おかけになった電話番号は、現在使われておりません」

姉「そんな見え透いた嘘を言うなー」

弟「おかけになった電話番号は、電波が届かない場所にいるか電源が入っていませ

  ん」

姉「いい加減にこの扉を開けなさーい!」

弟「いやだ」

姉「あー!お姉ちゃんを締め出すとはいい度胸してるわね!!後でどうなっても知

  らないわよ!」

弟「・・・(ガチャリ)・・・」

姉「そうそう、素直にドアを開ければいいのよ」

弟「はー・・・」

姉「みるとー、ちゃんと宿題と明日の課題は終わってるのかなー」

弟「・・・(黙ってプリントを見せる)・・・」

姉「うっそー!?もうこんなに終わってたのお!」

弟「当たり前です!誰かさんのように帰ってからずうっと大笑いしながらアニメを

  見ていたのとは違います」

姉「大笑いしながらとは失礼よ!それに録画しておいた分を一気に見ただけよ!」

弟「それで、姉ちゃんはホントは僕に何を言いたかったのですか?」

姉「そ、それはね・・・美流渡の社会科を見てあげようと思ったから声を掛けたの

  よ」

弟「結構です!」

姉「ちょ、ちょっと速攻拒否は酷くない!?こう見えても地理・歴史・公民だけは

  学年でもトップ10の常連よ」

弟「僕は明日は社会科はありませんから。それに僕はまだ数学の事前課題が残って

  ます」

姉「じゃ、じゃあお姉ちゃんが見てあげるわ!」

弟「お断りします!」

姉「『論より証拠』よ!お姉ちゃんに任せなさーい!!」

弟「はー・・・それじゃあ、この課題を姉ちゃんが解いてください」

姉「まっかせなさーい・・・えーと・・・三角関数・・・正弦定理?どうやって解

  けばいいんだったかなあ・・・」

弟「だーかーら、僕は一人で残りの課題をやりますからお姉ちゃんは自分の部屋に

  戻って下さい」

姉「ちょ、ちょーと待った!」

弟「だから何ですかあ?」

姉「お願いだから明日の古文の課題をやるのを手伝ってよお」

弟「最初から素直にそう言って下さい!」

姉「だってー、わたし、社会科以外は全然駄目だからさあ」

弟「はーーー・・・分かりましたよ」

姉「ひゃっほー!美流渡だーいすきー!(そう言って抱き着こうとする)」

弟「うわっ、危なかったあ・・・」

姉「こらー、逃げるなあ!」

弟「冗談じゃあありません!どさくさに紛れて変な事をしないで下さい!」

姉「またまたあ、そんなに照れなくてもいいのにさあ」

弟「そんな事を言ってるなら古文の課題は自分でやって下さい」

姉「そ、それだけは勘弁してくださいよお、美流渡さまー」

弟「はーーー・・・じゃあ、中に入って下さい。その代わり、真面目にやって下さ

  い」

姉「分かってるわよ」

弟「分からない事があったら遠慮なく言って下さい」

姉「りょーかい」

弟「・・・・・」


カリカリカリカリ・・・

カリカリカリカリ・・・


姉「・・・(ちょ、ちょっと何これ!?美流渡ったら教科書も参考書も見てないの

  に解いている!しかも迷いが無いし、たしか、このやり方なら間違いなく正解

  のはずだ・・・伊達に主席入学してない!)・・・」

弟「・・・(姉ちゃん、ほとんど間違いだらけなんですけど・・・だからと言って

  僕は間違いを指摘する気はありませんけど)・・・」

姉「・・・(う、だ、だめだ・・・どうしても美流渡の部屋にいると・・・ああ、

  この机のこの感触、それに美流渡の素敵な横顔、素敵な文字、まさに完璧な貴

  公子!さすがわたしの弟ね。お姉ちゃんも鼻が高いわ!)・・・」

弟「・・・(はー・・・これでよく進級できましたねえ、ってツッコミしたくなる

  位の出来ですよねえ。こんな姉を持った僕は恥ずかしいです!)・・・」

姉「・・・(あー、も、もうすぐ古文の課題が終わるわ・・・美流渡と一緒にやる

  とスラスラと答えが出てくるから、ぜーったいに次も美流渡と一緒にやろうっ

  と!)・・・」

弟「・・・(姉ちゃん、マジで勘弁してくれよお、そんな間違いだらけの課題を横

  目に見てたら僕の方が集中できないんだからさあ・・・いい加減に気付いてく

  れよ!)・・・」


♪♪♪~♪♪♪~


姉「あれ?」

弟「姉ちゃん、部屋のスマホに電話じゃあないのか?」

姉「あの音は御崎ちゃんからだー。くっそー、あと1問だというのにー」

弟「早く出た方がいいんじゃあないんですか?」

姉「仕方ないわね、ちょっと部屋へ戻るわ」

(バタバタ・・・あー、もしもし、ゴメンね、出るのが遅くなっちゃったー)

弟「・・・・・」


(うっそー、それってオイシイ話よねー・・・マジ!?ぜーったいに行くわよ!)


カリカリカリ・・・ペタ・・・

カリカリカリ・・・ペタ・・・

カリカリカリ・・・ペタ・・・


(うん、じゃあ詳しくは明日教えてねー・・・大丈夫大丈夫、気にしなくてもいいからさあ)


カリカリカリ・・・ペタ・・・

カリカリカリ・・・ペタ・・・

カリカリカリ・・・ペタ。

弟「はーーーー・・・・」


(じゃあねー、ばいばーい)


姉「ごめんねー、ちょっと長引いちゃって・・・って、美流渡がいない!・・・あ

  れ?メモ書きだ・・・」


『今日やるべき事は全部終わったからシャワーしてきます。PS 付箋紙を見て下さい』


姉「付箋紙?なんだそりゃあ・・・あ!」


 ポロポロ・・・


姉「美流渡、ありがとう・・・グスン」

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