Ep.18 宇宙の平和を守るのは

 レストランを出て、再びトゥモローランドへと向かう。

 目的地に着くまでは本当にわずかな時間である。

 ファストパスの利用なので、長蛇の列を横目に見ながら館内へと入っていく。

 入り口の上を見てみると、「STAR COMMAND」という看板があった。


「スターコマンドって、なに?」

「ひと言で言うと、宇宙基地ってところかな。ゆめくんは『トイ・ストーリー』って見たことある?」

「ごめん、名前しか知らない」

「じゃあ今度DVDでも貸してあげるよ。色々すっ飛ばして説明すると、映画の中に宇宙飛行士をモチーフにした「バズ・ライトイヤー」っていうおもちゃが出てくるの。で、

 スターコマンドっていうのは彼みたいな「スペースレンジャー」たちが所属する基地になるわけです。ここまでは、なんとなく分かった?」

「うーん、多分。それで、スペースレンジャーっていうのは何をしているわけ?」

「文字通りに説明すると、銀河の平和を守る戦士、だね。まあ、スーパーヒーローみたいな感じかな?」

「ってことは、誰かしら敵がいるんだよね?」

「ゆめくん、お見事! なかなか鋭いねー。その敵と戦って、宇宙の平和を守るのがバズ達スペースレンジャーなわけ。で、私たちは新人のスペースレンジャーとしてここスターコマンドを出発して、悪の帝王ザーグを倒しに行くのです」


 ちょっと長かったが、なんとなくは理解した。

 スーパーヒーローと悪のボスの戦いに、僕らも加わるという事か。

 話を聞いているうちに、前方で詰まっていた列が進み出したようで、ようやく中に入ることができた。

 するといきなり聞こえてきたのは、救援を求める悲痛な無線だった。


「なんか、既にヤバい状況になってない……?」

「そうだよ。だって、新人かき集めでもしないと無理って相当追い込まれてると思うよ」


 ただそんな状況にあっても、スターコマンド側には「戦う」以外の選択肢はないらしい。

 レンジャー達を招集し、バズ・ライトイヤーをリーダーに反攻作戦を始めるつもりのようだ。

 ふと壁を見てみると、ターゲットの狙い方だのアストロブラスターの使い方などといった説明書きがでかでかとある。

 多分見た目からして、マニュアルか何かなのだろう。

 その先で立っていたお兄さん(多分彼もスペースレンジャーなのだろう)にファストパスを渡し、次の部屋へと向かう。

 中で僕らを待っていたのは、これから出撃する新人達に指示を出す、バズ・ライトイヤーの姿だった。

 円形のお立ち台に上がり、赤い額縁のホワイトボードを使いながら作戦を説明していた。

 彼の後ろを通って、いよいよ発射台へ。

 青色の小さな宇宙船に乗り込むと、千春がブラスターの使い方を教えてくれた。


「銃はスタンドから外して、自由に動かせるよ。それから向きもジョイスティックで操作出来るの。今回は私がやってあげるから、自由にターゲットを狙ってみて」


 口を開くように下がっている乗り込み口には、2丁のブラスターとその間に小さなスティックがあった。


 出発直前で乗り込み口が閉じ、しばらくしてブラスターが起動する。

 目の前の宇宙空間ではなんと既に戦闘が繰り広げられていた。


「準備はいい?」


 OK、と答える代わりに、千春と同時に銃を引き抜いた。




 ******




 ミッションを終え、スターコマンドに帰還する。

 最終得点は千春がなんと20万点以上というとんでもない記録だった。

 僕の方は……初めてだったので、それなりである。


「ねぇ、どうやったらそんな点数取れるの……」

「慣れじゃないかな……これでもあんまり調子良い方じゃないし、どっちかっていうと」


 一体万全ならスコアはどこまで伸びていたんだろうか。


「でもゆめくんもすごいと思うよ、初めてなのにすごく当たってたじゃん。しかも1万点のターゲットとか、私なんか狙ってても当たらないのに」

「そ、そうかな……? 多分、ビギナーズラックってやつじゃないかな……?」

「それでもすごいよ、もっと胸張っていいよ」


 じゃあ、そういうことにしておこうか。


「この後は、もう少しトゥモローランドを回ろうかなって思ってるんだけど。お腹いっぱいのままあっちこっち行きたくはないでしょ?」

「まあ、そうだね」


 午前中だけで既にパークを1周しているようなものだし、歩き慣れていない僕にとってはこういうフォローがかえってありがたい。


「とすると、どうしようかな……あと行くとしたらグランドかジェットだけど、待ち時間がそこそこあるし、残りはショップとかになっちゃうし」


 おっと、よく分からない略語が出てきたぞ。


「ねえ、トゥモローランドのアトラクションは他にあるの?」

「あるよ。お隣の『ミクロアドベンチャー』は、今朝言ったからいいよね。あとは『グランドサーキット・レースウェイ』と、『スタージェット』かな。ワールドバザールとの境界近くに『モンスターズインク・ライドアンドゴーシーク』っていうのがあるけど、それが最近できたばっかりのアトラクションね」


 スターツアーズも合わせると、全部で7つか。

 スペース・マウンテンは休みなので、時間的に乗れそうのはあと2つといったところだろう。


「ここで説明してもいいんだけど、百聞は一見に如かずっていうから、まずは行くだけ行ってみる?」

「なんだっけ……その、グランドサーキット? と、スタージェットって近いの?」

「近いよ。というかすぐそこだし、スタージェットとは隣り合ってるから」

「そんなに近いの!?」

「うん、マップ見てみて」


 言われて地図を広げてみると、確かにほとんど隣同士の立地だった。

「グランド・サーキット」の方は、このままスペース・マウンテンに向かって左へ曲がるだけ。


「うわ、本当だ」

「行く?」

「どっちが良いかな……」


 しばらく考えたあと、ここは1度ガイドマップを見てからにしようと決めた。

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