海外からの観光客に道を聞かれやすい体質。

 私の住んでいるN県は、国内外を問わず、観光客がよく訪れる。

 

 今日も一人の外国人男性から道を尋ねられた。ホテルまでの道順がわからないのでイクスキューズミー、教えてプリーズ、こんな感じだ。

 ちょうど帰り道だったので、目的地まで連れ立って歩いた。つたないい英語でどうにかこうにか会話のキャッチボールをしつつ、どうやらパキスタンからの観光客らしいことがわかる。N県ラブ、とか仰るので、悪い気はしない。

 案内が終わると、先方が右手を出したので、こちらも右手を出して、シェイクハンド。国際交流。確か、パキスタンはイスラム教なので、左手は不浄ふじょうの文化だっけ。そんなことを考えた。

 別れてからスマホをいじくり、ひとしきりパキスタンについて調べたりした。


 昔からなぜか、観光客に道をよく聞かれる。どこかに物を尋ねやすいオーラが出てるのだろう。これまでに、イタリア、ハンガリー、中華人民共和国、韓国、アメリカ、ドイツなどの国民から声を掛けられた。

 道を教えるのは難しくはない。一緒に目的地まで連れ立って歩けばいいだけの話だ。ただし、こちらが暇な場合に限るが。

 案内が終わると、しばらくその国についてネット検索をするのが癖になっている。その国についての引き出しがあまりに貧弱であることを思い知らされるからだ。ハンガリーはカトリックが多い国か、なるほど。韓国では親指を立てるのが割に普通なのか、ほほう。

 イタリア人を案内してる途中、こちらの語学力を試すために、ダンテの『神曲』地獄篇の一節を原語で暗唱してみたが、通じなかった。どうやら、ダンテの『神曲』の内容自体を知らないらしい。日本人で言うなら、『源氏物語』の内容を誰もが知ってるとは限らないのと同じだ。

 あるいはこちらの発音が絶望的に悪かったのかしら。またイタリア人に会えたら、同じように暗唱して試してみるつもりだけど、なかなか機会がない。どこかにイタリア人の多い街はないか。

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