レイラとロベルナルト

真風呂みき

第1話 はじまり

 20××年

 ある一つの丸い、楕円形の大きな大陸が真っ二つに2つに割れた。


 そして、100年ほどかけて、ゆっくりとその大陸はまたくっつき始めた。


 しかし、100年も経てば地形は変わり、綺麗にくっつかなかったため、2つの大陸の境目には隙間ができた。

 そこは湖となり、我々の祖先は死ぬとその湖に埋葬されたと言われている。そして、また、100年ほど経つと、2つの人種が現れはじめた。それが人間と、魔法使いだ。そして、この大陸はその湖を境目として東と西の2つの国に分けられた。


 東の国は、「人間の国」

 西の国は、「魔法の国」


「これが、この大陸の歴史だ。わかったか?」


 眼鏡をかけ、綺麗に前髪を7対3で分けている人が、この大陸の歴史を熱心に話している。


 この教室には、男女30人ほど収容されている。

 皆、同じ紺の制服を着ている。胸ポケットには、「セントラルスクール」と刺繍されている。女子は胸に青のリボンを着けており、プリーツのスカートで可愛らしい。誰が着ても似合いそうなデザインであった。

 男子はブレザータイプで、青のネクタイだ。凛々しい。こちらは、女子とは違い、端正な顔立ちによく似合いそうなデザインであった。

 そして、一際その制服が似合う男子がいた。髪は黒色の、短髪。健康的な肌色で、眉毛が優しそうで、堀が深く、鼻がスっと通っている。薄い唇に、瞳はどこかクールな印象のある薄紫色だ。

 そんな彼は、窓際の1番後ろの席に座っている。

 窓の外をぼんやりと見ていた。


「ロベルナルト」


 彼の肩がぴくりと動いた。端正な顔立ちの彼の名前は、ロベルナルトと言うらしい。


 薄紫色の瞳が、窓の外から教室の中へと動く。しかし、先生が立っているはずの教室の前には、教卓だけがあった。


「ロベルナルト、こっちです。」


 彼は声がするほうを見た。それは、窓と反対側の彼の隣だった。

 先生は上から彼を見下ろして言った。


「ここにいる者は、この大陸を納める中立な立場の官僚になるのですよ。そのためには、この大陸の歴史は必要不可欠なのです。」


 彼はその短く答えた。

「はい。」


 表情をひとつも変えずに答える彼に面白くないのか、先生はすかさず質問をしていた。


「何を見ていたのです?」


 彼は、答えようとせず、だまって、くるりと先程の窓の外を見た。

 先生も、その動きにつられて、窓の外を見た。

 周りの生徒も、ちらちらと窓の外を見る。


 そして、その視線の先には、小さく林が見えた。なんの木かはわからない。その木の胸に向こう側からは黒い煙がもくもくと上がっていた。



 ジリリリリリリリリリリ


 そのベルがなると先生は、ロベルナルトの視線の先を見るのをやめた。

「……今日はここまで。」

 と先生が言い、彼の横から教卓へすたすたと歩き、分厚い本を持って教室を出ていった。

 周りの生徒がザワザワとしはじめる。


 そんな中、彼はまた窓の外を見ていた。

 誰とも話さず、1人で。

 まるで、彼だけがこの場にいないかのように見えた。


 私は、彼のことを見ていた。







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レイラとロベルナルト 真風呂みき @mahuromiki

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