第29話受賞式

授賞式の土曜日になった。

ペンポイントギャラリーは南青山にある。

小さなビルの地下一階のわずか12畳程の広さだ。


パチパチパチー!!優秀賞の人たちの表彰が終わった。


「最優秀賞 山本ミキさん。」

わぁーー!!パチパチパチ!!!

拍手が鳴りやまない。

「ミキちゃーん!」モモは思わず声をあげた。

「モモさん!!!!!」

「ん?モモさん?」

後ろからロングヘア―の五十代の女性が声をかけて来た。

「あなた津田さんのプロダクションでデビューを控えた新人さんね。

 うわさになってるわよ。

 私はペンポイントギャラリーのオーナーの山波です。」

「はい。はじめまして。モモといいます。今度デビューします。」

「授賞式の打ち上げにもしよければ来てね。」

「ありがとうございます。行きます。」


打ち上げは青山のお洒落なバーで開かれた。

山波さんや最優秀賞受賞者のミキちゃんだけではなく優秀賞の人や絵本編集者や絵本業界関係者が来ている。


モモは空気も読まずまっさきにミキちゃんに話しかけた。

「ミキちゃん。がんばったね。」

「モモさん・・・。すいませんでした。

 私。津田さんにスカウトされて

 しかもあんな素敵なアトリエがあったモモさんがうらやましかった・・・。」

ミキは泣きだした。

「いいの・・・もう・・・いいの。

 それより私はミキちゃんが最優秀受賞者になってうれしい!!」

「・・・モモさん。あ・・・ありがとう。」

ふたりは抱きしめあった。

「何があったの?」山波さんはいぶかしげに言う。

「秘密です。」ふたりは言った。


「わたしもね津田さんのワークショップを頑張ってたらデビューが決まったの。」

「お・・・おめでとうございます!!うれしい!!」


山波さんが優しく

「あなたたち。何があったか知らないけど自分たちだけで話さないで

 皆様と交流してね。」

と言った。

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