第28話最後のワークショップ
吉祥寺の夕暮れは雨が降っていた。道路も黒く濡れている。
あれから結局一度もミキちゃんとは会えていないモモが居た。
そしてワークショップは今日で最後だ。
「さてと、これでワークショップおしまい。モモさん残って。」
9時半になり津田さんは言う。
「え!?これで終わり!?私。まだ絵本作家デビューをしていないんだけど!!」リさんは大きな声で言った。
「ごめんね。こっちもこれで食べてる身だから。」
津田さんは申し訳なさそうに言った。
リさんは泣きながら勢いよくプロダクションから出た。
栗田さんは
「また来ます。」と言ってその場をそっと去った。
モモだけが津田さんに呼び止められた。モモは何だろうと思った。
津田さんは笑顔で優しくモモに話しかけた。
「モモさん。あんたは選ばれた人だ。きっとたくさん絵本と向き合って努力したん だろうね。それがラフににじみ出ている。
あなたの作品『ごろねこママのよる』をカラーで描いてもらい
商業出版する。」
「え!!!!それって・・・」モモは嬉しさのあまりふるえた。
「そうだ。デビューだ。」
「ありがとうございます!!頑張ってカラーの原稿描きます!!」
モモはキラキラと雨で銀色に輝く濡れた道路を一人歩いていた。
今までの事は全て無駄じゃないと思えるくらい幸せな出来事だと感じた。
私は自分の人生の主人公だ。そう思えた。
モモは嬉しさのあまり瞳からポロポロと涙が溢れ出て来た。
モモは資料集めに吉祥寺のまだ開いている書店へよった。
「うーん。なかなか参考になりそうな本ないなぁ。」
と、あれこれ迷っているうちに雑誌コーナーへ流れた。
そして、絵本情報誌を立ち読みした。
今年のペンポイントギャラリーの受賞者って誰だろう。
(ペンポイントギャラリーの最優秀賞受賞者は絵本を商業出版する権利が得られ る。いわば絵本作家の志望者の登竜門だ。)
モモは受信者の顔写真が載っていて見覚えのある顔に驚いた。
「ミキちゃん!!」
嬉しそうなミキの顔と作品の一部が掲載されていた。
ミキちゃん頑張ったんだ。授賞式は来週の土曜日だ。
一般の人も来ていいと書いてある。
モモは会いに行こうと決心した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます