第26話貧しさに負けないように

モモは昼間はバイトで喫茶ロジーで働き

夜はワークショップの宿題を描いている。


絵とストーリーを本気でその時のベストで描かないといけない。


モモは忙しくて息もつけない。


そして、第4回目のワークショップで

皆で自分たちの作ってきたラフについて熱心にディベートした。


帰り道にリさんが

「ねぇ。皆!おいしいカフェ見つけたんだけど!!」

「行く!!行く!!」栗田さんが言う。

「ぜひー!!」モモがつづく。


「・・・はい。」ミキちゃんが遅く返事をした。

モモはどうしたのだろうと思った。


そのカフェは隠れ家カフェで古い雑居ビルの中にあった。

入口はかがまないと入れないくらい小さなドアだった。

子供なら丁度いいくらいだ。

中に入ると

ふかふかのソファーと小洒落た机が何個か置いてあり。

南側には小さな窓があり。

西側には今話題の文庫本と古いレコードの並ぶ棚があった。


「いらっしゃいませー。」優しそうな大柄な女性店員がいた。

「四人です。」リさんは言う。

「お好きなお席へ。どうぞ。」


「わーい。なにたのもうかな!」栗田さんが言う。


「・・・私この・・・一番安い300円のオレンジジュースで。」

ミキちゃんは重たそうに言う。

「わかった了解!!」


リさんはアイスキャラメルマキアート750円

栗田さんはタピオカミルクティー700円

モモはアイスコーヒー500円をたのんだ。


皆で談笑していたがミキちゃんが会話に入ってこない。

そのことにモモは気づいた。


「ミキちゃん元気ないけどどうしたの?」

モモは言う。

「私。今週一週間。1000円で過ごさなくちゃいけないんです。

 貧乏で・・・実は・・・本当は創作活動どころじゃないんです。」

「そんなぁ・・・。」

モモは心から心配した。

他の皆もカフェに来てしまったことは間違いだったと思い。

ドリンクを飲んだら早々に会計を済ませ出た。


皆静かに吉祥寺駅まで行った。

そこでモモは思わず

「ミキちゃん。うちこない?ごはんもあるし。お風呂もあるよ。」

「ありがとうございます。お言葉に甘えてもいいですか。」

「もちろん。トミーファイルの仲間でしょ?」



モモの部屋はJR国分寺駅北口から徒歩15分の築20年の2LKだ。

一つの部屋は絵を描く用の創作部屋。奇麗に絵の具やパステルやインクや筆と紙が置いてある。絵も沢山置いてある。ラフも何冊かある。おしゃれに言うとアトリエだ。

二つ目の部屋はテレビやベッドやパソコンや服がある。


「私の部屋西永福にあって家賃が高いんです・・・モモさんの部屋アトリエもあって環境が整っていて魅力的ですね・・・」ミキちゃんはボソッと言う。

「そっかぁ。大変だね・・・

 そこの近所のコンビニにアイス買いに行こう!私のおごり!」

「はい。ありがとうございます。」


モモは男にフラれた事やじじぃからセクハラを受けた事やいとこのゆりに裏切られたことを面白おかしく話した。


「ははは!」みきちゃんが笑った。

でもミキちゃんは静かにアイスを食べて何も言わずに寝た。


モモはミキちゃんの事を大丈夫かなぁと思っていた。

そうしているうちに朝が来てしまった。

モモにはバイトがある。ミキちゃんも児童館でのバイトがある。

「おはよう。」

「おはようございます。」


「トーストとコーヒーしか出せないけど・・・」


「ありがとうございます。私・・・今日もバイトがあるけどここに

 帰ってきてもいいですか?」ミキちゃんはうつむきながら言う。

「いいよ!じゃぁ5時に待ち合わせでもいい?私はそのころにバイトから帰ってく るから。」

「はい。ありがとうございます。」



モモとミキちゃんはその夜も一緒に過ごした。

今夜もモモは自分の事を話すが

ミキちゃんは自分が貧しい事だけしか話さなかった。












朝になりモモは起きた。





モモのアトリエが絵の具は中身がぐちゃぐちゃに出ており

インクはこぼれパステルは折れて白い紙は破けていた。

そしてモモの作品達はなくなっていた。


ミキちゃんはいない。


部屋の玄関のドアが半開きだった。






モモはミキちゃんが気になった。


そしてモモは貧しさとは何かを考え込んでしまった。

お金だけが本当の貧しさをはかるものではないと感じた。

そうでなければミキちゃんはモモが励まそうとしたことに気づき

モモのアトリエをあのようにはしないはずだ。


モモはミキちゃんを想い重く沈んだ。


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