報い






とぼとぼと、小さな男が足を引きずりながら歩いてきた。


痩せこけて骨と皮だけになった男の腕の中には、小さな肉塊が収まっている。


ぼとり、と、溶けた肉片が地面に落ちた。


凄まじい腐臭に、リュウシンは鼻を覆った。


「爺さん、娘を治してくれ」


柴宿は泣きそうに顔を歪めた。


「爺さん、治してくれよ」


じゃり、と男が砂を踏みしめて、また一歩近づく。


リュウシンは後退った。


ぎょろりとした目がリュウシンを捉える。


震えて一歩も動けなくなったリュウシンを、男は興味を失ったように視界から外した。


リュウシンはがくがくと震える足で、その場にくず折れる。


男の手の中で、碧玉の耳環が揺れた。


「爺さん、病の原因はこの種だろう?爺さんが言ったんだ。なぜわかった?」



男がまた一歩、柴宿に近づく。


范溙は警戒するように鞘に手をかけた。


「爺さんが彩霞に来るまで、こんなことは一度もなかった。なぜだ?」


またぼとりと肉が落ちた。


「爺さん、あんたがこの毒花を撒き散らしたんじゃないか?」


ぎょろりと、室内でいくつもの不気味な目が柴宿を向いた。


背後で、爛々とした黒い目玉が柴宿を見つめる。


「怪しいまじないを広めたのは爺さんだった。原因が種だといったのも爺さんだ。爺さん、あんたにもらったこの霊薬には、何が入ってる?」



柴宿の周りを異様な目をした人が取り囲む。


「飲めよ」


男が枯れ枝のような手を上げた。


手には、不吉な花の種子。




「報いを、受けるべきだろう?」




どこまでも、昏い昏い声だった。

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