葬送
静かな闇夜に、ほんの刹那、紅が萌えた。
するり、するりと布帛が床を滑る。
絹糸のような髪が、するりとほどけて肩を滑り落ちた。
優美な指先が舞良戸にかかる。
氷のような怜悧な双眸が一人の肢体を無感情に見つめた。
口の端からわずかに花弁が覗いている。
やがて、ぼうっと薄く、ため息のような燐光が浮かび上がった。
「去りがたいか、娘を残して」
光は消えそうなほど弱く、仄かにまたたく。
幼い少女は、女に縋りつくように重なって眠っていた。
憐花は目を細め、無造作に少女に手を伸ばす。
「連れて、」
濡れたような珊瑚の唇から、囁くように零れる。
言葉は続かなかった。
さあっと風が吹いた。
少女はわずかに身じろぎした。
無意識だろう、握った手に頬を寄せ、安心したようにふにゃりと笑みを浮かべる。
遠くで排簫の音がした。切なく哀愁に満ちた笛だった。
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