兆し
灰の雪が降る。
びゅうびゅうと吹き付ける氷の礫は、人々を家の奥深くに押し込んだ。
ちらちらと火影が揺れる。
囲炉裏の奥で、赤子が泣いていた。
「ちょっとあんた、この子見とくれないかい。昨日からやけによくぐずるんだよ」
炭をかきおこす手を止めないまま、女は言う。
ぱちぱちと炉で火が爆ぜる音がした。
「ねえ、聞いてるのかい。いつまで寝てるのさ。あんたまで冬眠しちまったっていうのかい」
冗談交じりに笑いながら火かき棒をおろすと、鍋を軽くかき混ぜ、汁物を椀に注ぐ。
女の背後で、横たわった体から節くれだった手が重力に従ってかさりと落ちた。
雪よりも白いその腕は、床に落ちてなお、ぴくりともしなかった。
白く冷たい唇の端から、わずかに赤い花弁が覗いていた。
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