死の花





玲瓏山の峰に一輪の花が蕾を見せた。


砂塵のように灰の雪がはらはらと降り積もる。


ふと紅の気配が辺りを覆った。


さら、と絹のような髪が揺れる。


紅の唇が吐息を漏らす。



「久しぶりじゃの。二百年ぶりか……」


雪椿が舞う。


紅く、赤く。血のように。


「死人が出るの。はじめは――――榮木村」


南東の方角を向いて、つと目を細める。


黒髪が靡いて、憐花の顔を隠した。


蕾に手を伸ばすと、ぷつりと手折る。


白い指先に茎が絡まる。



死を誘う黒百合の花。


何者も寄せ付けぬ、高貴な花。





「不吉な花よ」



りいん、と音がした。





――――もうすぐ、星が堕ちる。















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