6
庭の鬼灯が白い花を咲かせている。
その日、風呂から戻ると灯りが見えた。
嬉しい…
でも怖い…
いろんなものが、ない交ぜになり
涙で息ができない。
やっとの思いで戸口まで来たけれど
引き戸を開けられない。
あたしは決めきれなかった。
どうしても出来なかった。
今の私の姿を見たら
あの人は去ってしまうかもしれない。
あの人にとって、あたしは妾だ。
それ以上は求められていない。
体を震わせ
戸口で立ちすくんでいると
引き戸がスッと開いた。
あたしは怖くなって、きゅっと目を瞑った。
もう、隠しきれないほど
お腹が大きくなっていた。
「あっ」
抱き寄せられ、思わず声が漏れた。
片腕だけで強く抱きしめられたあたしは
あの人が泣いていることに
しばらく気がつかなかった。
「一緒に、江戸へ来てくれないか?」
声が出せるまでにしばらくかかった。
あいつは小さく「へぇ」と言った。
神にも仏にも顔向け出来ないのは解っている
罰なら地獄で受ける。
だから、今だけは…
完
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