5

戦は凄惨を極めた。



人を斬る時は何も考えていない。

考えるよりも先に体が動く。

普通に走るよりも

斬りながら走ったほうが早いかもしれない。

理性は成りを潜め

本能だけに身を任せる。


あの日もそうだった。

無心で刀を振り回し、斬り倒していく。

しかし不覚にも腕を斬りつけられ、落馬した。




一瞬にして取り囲まれる。

「土方!覚悟!」

何本もの刀が重なり

一斉に振りかかってきた

その時




火花の中に、あいつの寝顔が浮かんだ。




俺には背負うものがある。すべての刀を跳ねのけて

大きな大義を背負っている。刀を水平に構え、気を練る

何百もの隊士の命を背負っている。全霊で斬りかかり、逃げる者は背後から斬る

これ以上、背負うことはできない。倒れた者の刀を取り、二刀を構え

ましてや女子供なんて腕を落とし首を跳ね

刀が鈍るに決まっている。屍を盾に、屍越しに突く



そう思っていた。





気がつくと周りには誰もおらず

俺は屍の山の上に立っていた。


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