5

「あり得ねぇ…絶対成功するはずなのに」


 タカシの兄ちゃんが言うには、あの神社で呼び出した人と協力して告白すれば、必ず成就するらしい。

だから縁結び神社なんだと。


 あれからあの娘とはお互い距離を置いている。もう、普通に話すことも出来ない。

 楽しかった日々が

 僕の青春が

 終わった。




 ドサッ!


「痛って…」


 ベッドで寝ていたはずの僕は、あの神社の前にいた。


 あ、呼ばれたんだ。


 祠のほうへ行くと、人影があった。


「あのー、呼びました?」


「きゃーーーーーー!」


 女の子?


「大丈夫?」


 腰を抜かしたその子に手を差し伸べた。



「!」



 あの娘だった。



「どうしたの?どうしてここに…神様が呼んでくれたの?」


 辛い…

 辛すぎる…

 失恋した上に

 あの娘の告白のお手伝いなんて…

 涙をこらえて言った。


「うん、呼ばれたのは僕だけど、ちゃんと縁結びのお手伝いはするよ」


「お手伝い?あの、私は…」


「誰と縁を結びたいの?」


 しばらく沈黙が続いた。

 そりゃ言いにくいよね…


「あ、あなたと…あなたと縁を結びたいの!」


「えっ、えっ、えーーーーーーーーーー!」


「あの時はごめんなさい。」


 あの娘は勢いよく頭を下げた。


「まさか、あなたの方から付き合おうって言ってくれるなんて、思ってもみなくてびっくりしちゃって、逃げ出しちゃったの。ごめんなさい…」


 真っ赤になって早口でそう言うと、震える瞳で僕を見上げた。


 か、かわいい…


「僕も、大好きだ」


 思わずサラッと口から出た。



 あれから

 タカシの兄ちゃんに会ったので

 僕たちが付き合うことになったと報告した。


「そっか、もう結ばれてたから成功しなかったんだな」



 僕は今

 天国の夏休みを過ごしている。

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