七 カギはそろった

 煤けたガラスの向こう、振り子が絶え間なく時を刻んでいる。透明感のある冬の陽射しが出窓から斜めに射しこみトルコ絨毯を照らしている。睡眠不足でぼやけた意識には、ちょうどいい刺激だ。

 臙脂色のソファに長々と寝そべったまま、パズル雑誌に万年筆を挟んで傍らのローテーブルへ置く。紅茶のポットは冷め、二つのティーカップは空っぽだ。さっきまでヴィタメールブラウニーをもりもり食べていた光の姉、占木まどかの姿はもうない。

 タテのカギもヨコのカギもそろった。あとは二重枠の文字を拾っていくだけでキーワードがわかる。ここまでくれば誰にだってできることだ。ソファから足を下ろし、ゆっくりと立ちあがる。

「さて」両手を天井に突きあげ、目いっぱい背伸びをする。

「たまには名探偵らしいことでもしますか」

 廊下から冷たい風が吹きこむ、細く開け放したままの扉へ足を進める。自己紹介の挨拶を考えながら、森澄紺は須藤家の応接室をでていった。

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